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六十一章 アルネの裁量
「宮廷警備隊および法務省は、両名に死を以て償われることを望みます」
カテリーナとハルパロスは、死罪。
この親子は、それだけの罪を犯した。
致し方ないだろう。
こんな空気が『裁きの間』に広がった。
だがしかし。
「その処罰は、却下したいと考えます」
法務大臣がくだした判決に、アルネが堂々と異を唱えたのだ。
終結に向かっていた空気を破る、この発言。
立会人たち全員が驚いたが、エディンだけは胸の内でニヤリと笑っていた。
(始まったな。アルネの高貴な血が、騒ぎだしたぞ)
彼は経験済みなのだ。
この少年の、内に秘めた光の輝きに射られるのは。
ただ、今は黙って成り行きを見守ることにした。
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