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「カテリーナ妃は、ピアスから先王に嫁いで来られた身。妃のおかげで、我が国とピアスは友好関係を築くことができたのです。それを、お忘れですか?」
アルネの発言は、もっともだ。
しかし、反論が返されてきた。
法務大臣は、言う。
「恐れながら、縁談はピアスからの熱望で実現したものです」
宮廷警備隊隊長は、言う。
「我がテミスアーリン王国は、ピアスとの外交が決裂しても、揺るぎない国力を持っております」
それもそうだ、だがそれは、と周囲はざわめき出した。
アルネはその中に、よく通る澄んだ声で続けた。
「ハルパロス殿下が使った薬は、東洋由来のもの。ピアスへ疎開中に、入手したと聞きます。ピアスはすでに、遥か大海の向こうと交易を果たしているのですよ?」
そんな優れた外交能力を持つ国と、関係を悪化させたくはない。
アルネは、さらに畳みかけた。
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