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「こちらの、オアニア親善大使の母国であるダマビアは、我が国とは比べ物にならないくらい、高水準な薬学を発展させておいでです」
突然に話を振られたオアニアは、一つ目をクルクルさせて戸惑った。
しかし、こんな風に母国を褒められて、悪い気はしない。
「必要なら、俺の知識を。いや、ダマビアの薬を、テミスアーリンのために役立ててください!」
胸を張って、明るくアルネに応えた。
アルネも笑顔で応えたが、すぐに表情を引き締めた。
「先の戦で国力の落ちている我が国が取るべき道は、他国との融和。内戦を終えて、すぐに外国との戦争となると、民衆はさらに苦しむこととなります」
アルネの主張を、最初は聞き流していた者たちも、今では真剣に耳を傾けていた。
そしてアルネは、きっぱりと締めくくった。
「カテリーナ妃およびハルパロス殿下は、我が国の王族と縁を切り、ピアスへとお帰りいただく。これで、いかがですか?」
現在の為政者のトップである、アルネ王子の下した決に、異を唱える者は無かった。
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