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第六十二章 ついフラフラと……

 カテリーナと、ハルパロス。  罪人とはいえ、先王の正妻と第一王子だ。  この扱いづらい高貴な犯罪者たちを、死罪ではなく祖国へ帰す、とアルネは裁いた。 『僕はただ、もうこれ以上人々が争ったり、国同士で戦ったりするのは、嫌なんです』  こんな弱音を、アルネはエディンにだけ打ち明けた。 「だが、それは弱音とは違う。国王が、必ず心しておかねばならないことだ」  エディンは、そうつぶやいた。  彼の胸の中で眠ってしまったアルネには、届いてはいない。  それでも、口に出さずにはいられない、エディンだった。 「頑張ったな、アルネ」  微笑みながら、エディンは優しく彼の髪を、撫で続けていた。

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