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第六十四章 春の花と共に

「正直なところを言えば、僕はエディン様との結婚を、考えたこともありませんでした」  アルネの返事に、エディンは、そして見守るオアニアと医師は、ドッと冷や汗をかいた。 (それは、お断りだ、ということか、アルネ!?) (アルネ様はフェリックス殿下を、結婚の対象とは見てなかったのかな!?) (しかし、アルネ殿下! あなた様の首元には、つがいの刻紋が!)  アルネは、不安感が一瞬にしてマックスになったエディンに、はにかみながら続けた。 「エディン様のように立派な方が、未熟な僕をパートナーに選ぶなんて。夢のまた夢だったんです」 「私は、君が未熟だと思ったことは、一度も無いぞ」  それどころか、と今度はエディンが、はにかんだ。 「いつも広く深い愛情で私を包み……癒してくれた」  さすがに、褒めてくれた、撫でてヨシヨシしてくれた、とは人目があるので言えないエディンだ。  それでも言葉の本質は、ちゃんとアルネに伝わっていた。

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