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第六十七章 祝福と春風
『結婚は、恋のゴールではありません。甘いだけの愛では、乗り越えられないわよ』
『フェリックス殿下と、アルネ。あなた方は、互いに尽くす覚悟がありますか?』
『口先では、ね。簡単に、どうとでも言えるのよ』
謎めいた、そして挑戦的な、アミエラの言葉の数々。
エディンはそれらを、年長者が若者に伝える戒めと考えていた。
しかしアルネは、母の深い思いを察し、彼に伝え始めた。
「母上が僕たちを外へ出したのは、きっと兄上のお世話のためです」
「体を拭いたり、口の中を清めたり、か?」
「それは、氷山の一角にすぎません。兄上のために、母上はあらゆる看護をしておいでです」
「……あっ!」
エディンもまた、ようやく悟った。
彼もまた、戦場で負傷し動けなくなった兵士を、衛生兵が看護する現場を見てきたからだ。
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