335 / 372

5

 長い時間をかけて、息を切らせながら。  指を震わせ、汗を滲ませながら。  仮王はエディンの手のひらへ、メッセージを書き続けた。 「兄上、少しお休みになられては?」  そんなアルネの心配そうな声に、彼は笑顔で首を横に振った。  エディンは、その姿に胸が熱くなった。 (陛下は、命を削ってまで……私とアルネに……お言葉を!)  ようやく伝え終わった、仮王の言葉。  エディンもアルネも、母・アミエラも、心が晴れた。 『フェリックス殿下とアルネの結婚を、認めます』 『アルネ、幸せになるんだよ』 『フェリックス殿下、良き家族となりましょう』  四人で、手を取り合った。  窓から入る柔らかな風は、かすかに春の香りがしていた。

ともだちにシェアしよう!