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 仮王は、その後も緩やかではあるが、順調に回復していた。  当初はエディンからの看護をためらっていたが、すぐに慣れて今ではすっかり打ち解けている。  エディンの力ならば、彼の体を軽々と抱き上げることができるので、今日は窓辺の椅子に掛けて、外の空気を味わっていた。 「まぁ。景色を眺めていたのね」 「兄上、ご機嫌はいかがですか?」  療養室にやって来たアミエラとアルネに、仮王は微笑んだ。  表情も、豊かになった。  そして彼は、ペンを持って字を書くこともできるようになっていた。 「フェリックス、殿下……あれを……」 「はい。仮王陛下」  エディンはベッドサイドのチェストから、一通の封書を取り出した。  国王の刻印がある、改まったものだ。 「陛下がおっしゃるには、議会を招集して開け、読み上げて欲しい、とのことです」 「兄上。今ここで、開けてはいけないのですか?」 「内容は……アルネを、国王に……任命する、ものだよ……」 「ええっ!?」  アルネは驚いたが、さらなる驚きは、自分以外の誰も慌ててはいないことだった。

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