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第七十二章 癒し癒されるもの
アルネを、テミスアーリン国王に任命する。
突然に兄・仮王から、そう宣告されたアルネは驚き、とまどった。
そして、さらに驚いたのは、その場にいる母・アミエラとエディンが全く動じていないことだ。
「母上とエディン様は、兄上の意思を知っておられたのですか!?」
「驚かせてごめんなさい、アルネ」
「私たちは、事前に陛下から相談を受けていたんだ」
二人の返事に、アルネの心に悲しみが広がり始めた。
「そんな……。みんな、僕に内緒で!?」
(僕だけを仲間外れにして、勝手に決めて……!)
いつ完治するか解らない障がいを、兄は背負ってしまった。
彼の代わりに、頑張るつもりでは、いた。
仮王代理としての責務を果たすつもりでは、いた。
薄々、自分が国王になるかもしれないと、考えては、いた。
だがアルネには、あまりに突然すぎる決定だった。
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