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「アルネ、傷つけてしまって、すまない。許してくれ」
「エディン様……」
悲しさで潰れてしまいそうなアルネの心を救ったのは、エディンの穏やかな声だった。
「もっと、君の気持ちを考えるべきだった」
それは、いつもアルネに掛けられる、低く優しい声だ。
いつもと変わらぬエディンの声音に、アルネは踏みとどまった。
いきなり国王に任命されるという異常な事態に、圧し潰されずに済んだのだ。
(エディン様の声音には、裏表が無い。心から、謝ってくださっているんだ)
彼の声はアルネの胸に染み入り、傷を癒した。
「エディン様、ありがとう」
「ぅん?」
「あなたはいつも、僕に向かって『癒される』とおっしゃいます」
「そうだ。君の存在自体が、私の癒しなんだよ」
「でも、気付きました。僕も、エディン様に癒されているんです」
これまでずっと、そうだった。
そして、今まさに強く感じていた。
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