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 春先の風を味わいながら、楽しく家族の会話を聞いていた兄が、少し咳をした。  短いが、それが何度も続く、嫌な咳だ。 「義兄上、そろそろ横になりましょう」 「そうだ……ね」  エディンに抱えられ、兄は椅子から離れた。  すぐにベッドへ移される姿を、心配そうにアルネが見ている。   そんな彼を励まそうと、エディンは明るく言った。 「義兄上には、まず療養に専念してもらおう。私たちの婚礼の儀に、出席していただくためにも」 「こ、婚礼の儀?」  これはまた唐突に、パワーワードがアルネを襲った。  それでもエディンは、素知らぬ顔だ。  アルネに反論する隙を与えなかった。  さらに畳みかけるように、口を開いた。

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