364 / 372
4
春先の風を味わいながら、楽しく家族の会話を聞いていた兄が、少し咳をした。
短いが、それが何度も続く、嫌な咳だ。
「義兄上、そろそろ横になりましょう」
「そうだ……ね」
エディンに抱えられ、兄は椅子から離れた。
すぐにベッドへ移される姿を、心配そうにアルネが見ている。
そんな彼を励まそうと、エディンは明るく言った。
「義兄上には、まず療養に専念してもらおう。私たちの婚礼の儀に、出席していただくためにも」
「こ、婚礼の儀?」
これはまた唐突に、パワーワードがアルネを襲った。
それでもエディンは、素知らぬ顔だ。
アルネに反論する隙を与えなかった。
さらに畳みかけるように、口を開いた。
ともだちにシェアしよう!

