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第35話
警備員から連絡を受け、医者や看護師だけでなく伊吹の所属事務所の社長とマネージャーまで病院に集まった。
事務所側が今回の出来事はすべて伊吹が悪いと頭を下げてくれたが、伊吹はなにもしていないと説明をした。むしろ運命の番なのに応えてあげられなくて申し訳ないと謝り、警察に通報することなく示談という形でまとまった。
ひと段落すると身体がポカポカする。ずっと冷たい水に浸かっているように寒かったのに体温が戻ってきている。
そう零すと伊武は慌ててフェロモン簡易測定器で計測してくれた。
「数値が七十を超えてます。もしかしてヒートがくるかもしれません」
「そうなるとどうすればいいんですか?」
「番になるのもよし、新たな抑制剤を試してもいいです。でもいまは」
診察室のドアを見た伊武はやさしげな顔を向けてくれ、頭が煮えるように熱くなった。
伊武の言葉通り病院を出た頃になると全身が熱くて頭がぼんやりする。この感覚には憶えがあった。
「ちぃ?」
隣を歩く律の声が遠く聞こえる。離れていかないように律の手を掴むと下腹部が熱く、ズボン越しでも性器が硬くなっているのがわかった。
「……ヒートくるかもって」
律の目はいままでにないくらい大きく開いた。
「確かにフェロモン出てる」
「どうしよう、俺」
我慢できない、と足を擦り合わせていると律に抱きかかえられた。
「近くにマンスリーマンション借りてるから行こう」
小走りに、でも刺激を与えないように急いでくれる。律の呼気が肌に触れるだけで身体が甘く痺れた。
「ちぃ、もう大丈夫だよ」
ベッドに降ろされそうになり腕の力を込めた。一秒だって律と離れたくない。
「律……」
名前を呼ぶと律が顔を近づけてキスをしてくれた。何度も唇を食まれ、そのわずかな戯れにでも達してしまった。
「ごめ……イっちゃった。止まんない」
キスをしているだけなのに頭が白ずみまたぐんと性器が固くなる。下着のなかがぐちゃぐちゃで気持ち悪い。
首まで真っ赤にさせた律と目が合うだけで五感が刺激される。目も耳も鼻も口も肌も律を求めていた。どこもかしこもおかしい。
再び顔が近づいてきてキスをした。体温がさらに上がる。触れた唇から律からの想いが流れてきて、眩暈がしそうだ。
律が上に乗り、ズボンを脱がされると糸を引くほど下着が濡れていた。むわりと雄の匂いがたちこめる。蕾の周りは体液で濡れ、寂しそうに収縮を繰り返していた。
「挿れて」
「ちゃんと慣らさないと」
「そんなのいいから……んぁ!」
律の指がすんなりと中に挿入った。柔らかいそこを確かめるように指が前後に動く。
その刺激だけでも頂点を極め、射精してしまった。
「またイった?」
「イってる……またでる」
足を閉じるより先に精液が出て腹を汚した。自分の意思では制御できない快楽の連続に涙がこぼれる。
「やだ、なにこれ……怖い」
「ずっとヒートきてなかったから、一気にきたのかも」
「怖いよ……律、助けて」
泉のように湧き出る快楽に抗えない。怖くて堪らない。意志の力ではねじ伏せることもできなかった。
律は耐えるように唇を噛み締め、ズボンのポケットを探っている。ぼんやりと眺めていると手に錠剤が握られていた。
「それなに?」
「アルファ用の抑制剤。このままだとちぃになにするかわからない」
「それいつも飲んでるの?」
「ちぃと会うときはね」
「じゃあ初めてヒートがきたときも?」
初めてヒートがきたとき、律は冷静に対処してくれた。こっちは理性を焼き切って欲しくて堪らないと泣いていたのに律の冷静ぶりに「運命の番」じゃないからフェロモンが効かないのだと絶望した。
「そうだよ」
「なんだよ、それ。早く言ってくれれば」
「好きな人の前ではカッコつけなくなるんだよ」
ちゅっと頬にキスを落とされて、また涙が溢れて視界が歪む。
「じゃあもうそれいらないじゃん」
「ちぃに負担かけたくないから」
「これでも?」
ネックガードの鍵を開けて床に投げ捨てた。ごとんと金属音が不満を訴えるように響く。
さらすように横を向くとうなじが待ち侘びるように熱を持ち始めた。フェロモンが出ているのだろう。律は瞬きも忘れ、食い入るようにうなじを見ている。
「そんな煽るような真似どこで覚えたの?」
「律が悪いんだよ」
「もうどうなっても知らないから」
身体をひっくり返され、うなじを強く噛まれた。
「ーーっんぅ!」
番になった。やっとこれで律と繋がれたんだ。
余韻に浸る暇もなく、性器が挿入ってくる。がんと奥を突かれ、反動で白濁が飛び出た。中がきゅうと締まり、律の性器の形を記憶しようとしている。
「はぁ、んんっ……律」
振り返ると律がキスをしてくれた。腰を掴まれる手の力が強い。荒っぽい動きは普段の律から想像できないほど獣じみていて、それだけ求めてくれているのだとわかり嬉しかった。
カリに弱い部分を押し上げられ、びりりと電流が走るように快楽が性器に集まる。
「あっ、また……イく」
「俺も」
「んんっ」
中だけで達してしまい、射精とは違った快楽に身体が蕩けてベッドに突っ伏した。
あとから熱いものが注がれる。中が収縮しながら受け止めているが溢れて太腿を伝う感触にすら感じた。
「はぁ、んん」
カリに前立腺を押し上げられたままくるりと体勢を変えられて、律動が始まる。一度達したはずの律の性器は硬さを保ったままだ。どうやら休ませるつもりはないらしい。全身がびくびくと震えて耐えているとうなじに唇が触れた。
「俺の番」
愛おしそうに触れてくれる。
やっと律と番になれたんだと実感が湧いて涙が止まらない。
「あっ、あっ、んん」
「好き、大好き。ちぃ……愛してる」
「俺も好き……あっ、んっ!」
腰を掴まれて奥を突かれるたびに中でイってしまう。
「ちぃの中、すごい痙攣してる。もしかしてずっとイってる?」
「あ、んん……わかんな、あっ、あぁ」
「止まんないね。俺はまだまだ平気だけど」
振り落とされない腕を伸ばして背中にしがみついた。律の汗が手のひらに張りつく。
このままずっとこうしていたい。
いつまでも終わらない快楽に溺れながら、この幸福を噛み締めていた。
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