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第14話
頭を軽くかいたあともう一度ため息をついて、こっちを真剣な顔で見る。
「…俺、そんなすぐに先輩のこと嫌いになりそう?
そんなに信じられない?そんな軽い気持ちで好きって言ってると思う?
先輩が今泣いてる理由がなにか分かんないけど辛いなら言ってよ。
俺たち付き合ってんじゃん。
ちゃんと言わなきゃ伝わんねぇし分かんねぇ。
察するとか俺には無理だからなんかあるなら言って。」
初めて聞く荒っぽい言葉に少し面食らう。
怒らせたいわけじゃないのに、こんなときばかり声が出なくなる。
「…きつい言い方してごめん。
でも俺、先輩のことちゃんと好きです。
泣くくらいなにかあるならちゃんと聞きたい。
そんな半端な気持ちで好きになってないし、付き合ってない。」
何も言い出せない僕が悪い。
少しずつでいいから思っていることを伝えなきゃ。
言わなきゃ伝わらないし分からないなんて、本当にその通りすぎて何も言葉が出ない。
優しく手を握ってくれる立浪くんの手を握り返して、少しずつ今まで不安に思っていたことや次から次へと溢れて止まらない僕の汚い欲の話をした。
立浪くんは途中で言葉の詰まる僕の背中をさすりながら話を聞いてくれて、話し終えるとひとつ息をついた。
あのね先輩、と前置きして強い力で抱きしめられる。今までにないくらい強くて身体が痛い。
少し身体を捩って逃げようとしても少しも逃がしてくれない。
「俺だって先輩といろんなことしたいです…!
次から次へと俺だってしたいことだらけで余裕なんて全然ない。
さっきの先輩見てそのままやりてーって思ったし、俺だって自分の痛いくらい勃ってたって。
気付いてないかもしんないけど、俺キスでも毎回そうなんですけど!」
言い終わったあと軽くキスをされて、立浪くんは僕の手を持って少し大きくなった彼自身に触れさせた。
「ね?こんな軽いのでもこうなっちゃうんですよ?
好きじゃなきゃこんな風にならないでしょ?」
「ん、うん…ごめん…。
立浪くんの、触ってみていい?」
えぇ、と困惑した声をあげて考えたあと少しだけズボンを下げてくれる。
そのままズボンをもう少し下げて立浪くんの大きくなったそれを露わにして口に含むと、慌てた様子で抜いた。
「わーっ、だめ!口に入れたら汚い!
あぁもう、ほんと何してんの…ほら口拭こ」
まるで母親が小さい子供に言うみたいに言うと制服の裾で口を拭ってくれる。
そんなことしなくていいの、とズボンをなおして座りなおした彼はこっちを向いて困ったように笑った。
その顔がたまらなく愛おしくなってさっきまでと別の涙が出そうになる。
立浪くんが伝えてくれた分、僕もちゃんと伝えなくちゃ。
「立浪くん。あのね、だいすき。」
「―――ちょ、っと待って。」
急に後ろを振り返ってどんな表情をしてるか見えなくなる。
少し不安になって後ろから抱きつくと珍しく立浪くんがびくっとした。
「立浪くん?」
こちらに向き直って僕を正面から抱きしめると、僕の肩にぐりぐりと頭を押し付けてくる。
くすぐったくて笑っていると立浪くんは動きを止めて僕の顔を見ずに言った。
「先輩知ってる?先輩から好きって言ってくれたの、今のが初めてなんだよ。
言い出せなかったけど、実はすげー不安だったから今やばい、めっちゃうれしい。」
ぎゅ、と抱きしめる力が強くなる。
自分自身は好きで仕方ないくらい好きで、相手にもちゃんと伝わってると思っていたのにそんなことはなくて、こんな風に気にしていたことに驚く。
余裕そうに見えるっていうのは、こういうところにも良くない作用をもたらすみたいだ。
いつも余裕そうに見える立浪くんが顔を真っ赤にしてる、そんな姿が可愛くて立浪くんの胸から抜け出して、ベッドに立ち膝になって立浪くんの頭を抱え込むように抱きしめた。
いつもは僕の方が抱きしめられてるけど、こうしたら僕の方が高くて立浪くんを抱きしめてるみたいになる。
そのまま立浪くんも抱きしめてきて、なんとも言えない不思議な気持ちになる。
今まで付き合ったことも、そういう経験をしたこともない僕は自分が受ける側なのか攻める側なのかを考えたことがなかった。
いま気付いたのは、僕は多分受ける側だということ。
立浪くんを抱きしめるより、強い力で抱きしめてもらいたい。
すとん、と立ち膝をやめて立浪くんに抱きつくと思った通り抱きしめてくれる。
変なこと聞いていい?と立浪くんに聞くと、短く ん? と聞き直してきた。
「僕とその、最終的にそういうことするなら立浪くんどっちがいい?」
「んえ、また唐突な…。
んん、そりゃもちろん攻めたいですけど。」
「ん、そっか、じゃあ大丈夫だね。
僕多分攻められないから、よかったぁ。」
立浪くんにもたれかかると立浪くんは いやいや、 と僕の肩を掴んで首を振る。
大丈夫じゃない、と立浪くんは何度も言う。
首をふるふると振って頭の中を整理しているみたいだ。
「最終的にってことは、多分それセックスのこと言ってますよね?」
改めて言葉にされるとものすごく恥ずかしいけど頷く。
その様子を見て顔を覆い隠して あぁー、 と叫ぶとこっちを見た。
「それ今聞くの駄目ですよ。めっちゃ期待しちゃう。
なんならもう今すぐとか思っちゃうもん。」
「なっ、今すぐは無理だよ、多分、多分むり。」
多分むり、は多分むりじゃない。
まだ何もされてない下半身が少し反応しかけて、体勢をかえようとすると見透かしたように押し倒される。
なんでもうこんなときばっかり僕の下半身は反応がいいんだよ。さっき出したばっかだろ。
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