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第17話

少し動く度に下半身だったり上半身だったり、どこかしらが触れる。 僕が上に乗っているせいで立浪くんが動くと口元に僕の胸元が少し近づく。 意識していると思われたくなくて距離をとろうとすると腰を引き寄せられた。 「…舐められそうだなって思ってるでしょ?」 考えが見透かされて顔が赤くなる。 「なんで分かるの?」 「んー?先輩えっちだもん。そういうこと考えてんのかなーって。」 「なっ、僕より立浪くんの方が…んぅ、」 話しかけの唇を塞がれて水が跳ねる。 僕の方が上の位置にいるのに全然主導権を握らせてもらえなくて、それが嫌じゃないと思ってる自分が嫌だ。 強引なキスも少し意地悪な物言いも本当は全部好き。見透かされてるのだって本当は嫌じゃない。 キスをしてるうちにだんだん気持ちよくなってきて彼の首に抱きつく。 もっとしてほしい。もっと求めてほしい。 欲深い僕は立浪くんの言う通り本当はすごくいやらしいのかもしれない。 だって今もきっと僕の方が彼を求めてる。 「先輩ストップ、のぼせるからあがろ?」 身体は熱を帯びていたけど、それが本当にお風呂で温まったからなのか 立浪くんと触れ合ったものでなったものなのかは分からない。 立浪くんの方を見ても涼しい顔で身体を拭いていて、今のことを気に留めた様子はない。 僕一人だけ期待してるみたいでそれもなんだか悔しい。 あんなにしたのになんで僕はまた期待してるんだろう。 「先輩おいで、髪乾かしてあげる。  あとで俺のも乾かしてね」 洗面台の前で乾かしてもらいながら立浪くんの顔を鏡越しに覗く。 整った顔。癖のない黒髪。少し伸びたとはいえまだ短い髪。 ちゃんと手入れの行き届いた凛々しい眉。 なんでこんなにもてそうな容姿なのに選んだのは僕なんだろう。 目が合うと鏡越しに笑いかけてくれるその顔に胸がぎゅっと締め付けられる。 ドライヤーを止めると今度は俺の番、と僕の前に出てきたものの、立浪くんの背の方が高いから上まで届かない。 「座ってくれなきゃ乾かせないから部屋戻ろ?」 手を軽く繋ぎながら部屋に戻ると、大人しく座って髪の毛を乾かしてもらうのを待つ立浪くんがどうしようもなく愛おしくて後ろから抱きつく。 ―――あぁもう、好きだなぁ。 今日が幸せすぎて明日からどうやって暮らしていこう。 一人で食べるご飯や一人で寝るベッドが寂しいなんて知りたくなかったな。 「先輩?どしたの?」 「んー、ううん。なんもない。」 いつもはちゃんとラフな感じでセットされてる髪の毛はストンと落ちて、いつものイメージとかわって少し可愛い。 普段はかっこいいのにこういうギャップはずるいと思う。 立浪くんのTシャツから少し覗く腹筋は綺麗に割れていて、自分のお腹がいかに鍛えられてないかが分かってなんだか切ない。 立浪くんの筋肉は制服を着てれば分からないのに、学校のジャージや今みたいなラフな服装のときに少し分かる。 脱いだときに見たら思ってたよりも、もっとすごくてそんなとこにもどきっとしたけど。 「なんでそんな見てるんですか。」 そんな邪な気持ちを見透かしたようにこっちを見て、いじっていた携帯を置く。 「…お腹、割れてるなぁって。」 あぁこれ、と服をぺらっとめくる。 綺麗に縦と横に入る線にゆっくり触ると一瞬身体を震わせた。 「やらしい触り方しないでくださいよ。  みてこれ、反応しちゃったじゃん、恥ずかし。」 「ふぅん?そんなつもりないのに、立浪くんもえっちだね?」 ここぞとばかりにお風呂場での仕返しをする。 いつも余裕な返しの立浪くんにひとつでも仕返しできたことを喜んで笑っていると僕の手を掴んで意地悪そうに笑った。 そんなに強い力で掴まれてないのに、掴まれた手首がジンジンと熱くなる。 「先輩はじめてだし、負担になるかなって遠慮してたけど  俺えっちだし我慢できなくなってきちゃったかもー。  先輩が煽ったんだからちゃんと責任取って最後まで付き合ってね?」 トン、と軽く押されただけなのにベッドに倒れ込んだ僕の上に乗って、掴んだ手首に軽くキスをした。 「前切ったとこ、ここですよね?」 そう言って傷も残っていない手首を撫でたあといやらしい音をたてて舐める。 手首なんて絶対に性感帯じゃないのに、音のせいで恥ずかしいことをされてる気分になる。 「も、分かった、僕が悪かったから、やめよ? ごめんね?」 手首を引き抜こうとしても立浪くんは離してくれない。 それどころか逆に引っ張って僕の身体を引き寄せた。 「んー?俺まだ1回しかイッてないし、ごめんね?」 わざと語尾を合わせて言ってくるけど、絶対ごめんね、なんて思ってない。 僕だって口では待って、なんて言っちゃうけど本当は待たなくていい、もっと欲しがってほしい。 結局のところ僕も立浪くんも、二人ともいやらしいってことだと思う。

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