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第18話
これは先輩が悪い。
ぐったりと横になる先輩を見ながらそう思うことにする。
『立浪くんもえっちだね』
なんて小悪魔な笑顔と共に言われて、はいそうですね、なんて流せる男はきっといない。
そんな風に煽られたらそのまましちゃうに決まっている。
ただちょっと加減ができなかったかな、とは思う。そこだけは反省。
「先輩ごめん、大丈夫?痛い?」
髪を撫でながら聞くと閉じていた目を開けて恨めしそうにこっちを見た。
「立浪くん激しいんだもん。やめてって言っても全然やめてくれないし
僕がイッたあとも全然やめてくれなかったでしょ。」
「…ごめん、だって俺まだイッてなかったんだもん…。」
ふふ、と先輩が悪戯っぽく笑う。この人こんなに色っぽかったっけ。
横になってる先輩の頭を撫でていると、それを止めるみたいに手を絡ませてきて先輩の顔の横に手を置いた。
「ねぇ、お願いがあるんだけど…」
「俺で聞けることならなんでも。」
んー、と少し言葉に詰まりながら繋いだ手で顔を少し隠すと小さな声で「名前で呼んでほしい」と思っていたよりはるかに可愛いお願いをしてくる。
「あー、優紀 って?呼び捨てしてほしいの?」
ん、と小さく返事をすると恥ずかしそうにこっちを見た。
「じゃあ優紀は?俺の事ずっと“立浪くん”のままなの?」
「…あ、えっと…颯斗 くん?」
「ちょっと待って、それ可愛い。」
呼び捨てされると思ってたのにまさか敬称つきで呼ばれるとは。
首を傾げた仕草まで相まって余計可愛く見える。
この人は自分の顔の綺麗さとか、俺が感じた色気とかそういうの気付かないんだろうな。
こういう色気が学校でも出ちゃったらモテそうで嫌だな。
……うわ、独占欲つっよ。しんどいって。
頭の中で考えを打ち消して優紀の横に入り込む。
シングルベッドで男二人は狭くて、それでも離れたくないから無理矢理くっつく。
「颯斗くん、今日色々とありがとう。」
「なに、ヤッたあとの後処理とか?」
ばか、と優紀が俺の胸を軽くたたいて笑う。
電気を消して暗くなっても目が慣れればほんの少しぼんやりと見える。
目が合うとどちらからともなく唇を重ねた。
さすがにもう身体を重ねることはなかったけど、二人で狭い狭いと言いながらくっついたり離れたりする。
幸せな時間すぎて寝るのがもったいない。朝になってほしくない。
まぁそんなこと思ってても寝ちゃうし朝は来るわけで。
狭いベッドで寝たせいで身体が痛い。優紀はまだ隣で寝息を立てていて勝手に顔がにやける。
そっとベッドから抜け出して、顔を洗ったり色々と準備をして朝食を作りはじめた。
料理は母親から『今どきの男は料理くらい作れないと!』と言われ、幼いころから叩き込まれたせいか別に苦じゃない。
昨日は建前ですきだといったけど、実際は苦じゃないだけで好きでもない。
ただ好きな人があんなふうに喜んでくれるなら、好きになれそうだとも思う。
サンドウィッチを適当に作って部屋に戻ると優紀は起きていて、ちょうど着替えようとしていたのか服を脱ぐところだった。
綺麗な顔立ちから想像できないほどたくさんつけられたキスマークがミスマッチで、自分がしたことなのに笑ってしまう。
「颯斗くんおはよ。なんで笑ってるの?僕のお腹が全然割れてないから?」
少しムッとした顔でそんなことを言うから抱きつきにいく。
抱きしめ返してくる優紀が愛しくて仕方ない。
「ちがうちがう、優紀の胸んとこキスマークすごいなって。
腹なんて割れてなくていいよ、触り心地悪いし。今のままがいい。」
「颯斗くんがつけたのにー。
僕お腹割れてるの好きだよ、だって颯斗くんのお腹かっこいいし。」
優紀は細身だけどガリガリではなくて、中肉中背ってほど肉はない。
でも抱きしめてて痛くなくてちょうどいい。
優紀の家でのんびりしていたらあっという間に日が落ちそうで、帰る時間が迫ってくる。
さすがに身体の負担を考えたらもう抱くことは出来なくて、それでもそういう雰囲気になることはあってその手前くらいまではした。
自分の手であっけなく果ててしまう優紀が可愛くて綺麗で誰にも渡したくない。
昨日してから余計に独占欲が強くなったと思う。
誰にも触らせたくないし、本当は誰とも話してほしくない。
二人だけの空間でずっと過ごしていたいなんて、自分の独占欲の強さに嫌気がさす。
「颯斗くん?疲れちゃった?」
そんなことを考えていたら口数が減ったのか優紀が心配そうに顔を覗いてくる。
「大丈夫だよ、ごめんね。あー、そろそろ帰るかなぁ。」
そっかぁ、と明らかに寂しそうな声を出すせいで帰りたくない気持ちが強くなる。
それでも2日も続けて泊まりはなかなか難しい。
軽く繋いだ手をほどくのが嫌で動くことができない。動けば帰らないといけない。
明日も休みだけど会えば絶対疲れさせちゃうから。
そもそもサッカーあるし。いやサッカーなんて休めばいいんだけど。
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