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第22話
なんだか下半身の絶妙なとこに颯斗くんの胸元があって、自分のが反応して気まずい。
「なに、俺の余裕ないとこ見て興奮しちゃったの?」
「そうじゃないけど!」
じゃあなにこれ、と言いながらズボンの上から触る。
そんな緩い刺激でも感じてしまうほど敏感になっていて、すぐに息が荒くなる。
「はっ、んん…」
颯斗くんが僕の上から起き上がって僕のズボンのベルトを緩めると直接触り始める。
自分でもわかるほどぬるぬるしていて、恥ずかしくて颯斗くんの顔が見れない。
自分のせいなのにいやらしい音が聞こえるたびに胸が破裂しそうなほど恥ずかしくなる。
気持ちいいのに最後までしてもらえないもどかしさが少しづつ苦しい気持ちにかわっていく。
「ね、颯斗くんおねがい、イキたい…」
「そんなすぐ気持ちよくなっちゃってほんとやらしいね。
俺じゃない人に触られてもすぐ勃って簡単にイッちゃうんじゃない?」
「なんでそんな…っ、意地悪…っ…ん、ぁ、や…イッちゃ…っ」
颯斗くんの用意したティッシュに出したあと颯斗くんを睨みつける。
ただの言葉責めなのかもしれないけど、疑われたような気がして腹が立った。
こんなにも人に怒ったのは記憶する限りあの小学生の頃以来。
「…颯斗くんは僕が他の人とすると思ってるんだ?」
僕がそう言うと颯斗くんも負けじと言う。
「だって優紀すぐ良くなっちゃうじゃん。
…先輩がもし練習してたら勃っちゃってたかもよ?
長谷部先輩が帰ってすぐ欲情してたじゃん、それって俺に?先輩にじゃないの?」
「―――っ、ばっかじゃないの!
僕がこんな風になるの颯斗くんだけなんだけど!
じゃあ颯斗くんは僕以外で勃つんだ?颯斗くんの言い方ならそういうことだよね?」
売り言葉に買い言葉でお互い強い言葉で言い合う。
こんな風に喧嘩したいわけじゃないのに。
なんで気持ちよくなったあとに喧嘩なんてしないといけないんだろう。
「だってそうじゃん、優紀は男が好きなんでしょ?
じゃあ女といるよりそういう不安増えて当たり前じゃないの?」
――颯斗くんがそういう心配をするなら僕の方はもっと心配だよ。
だって颯斗くんは元々女の子が好きなんだから。
そんなかっこいい顔して、背だって高くて、キスだって、セックスだって上手じゃん。
優しくて料理も上手で、そんなの知ったら女の子たちがほっとくわけない。
「颯斗くんは女の子と恋愛できる人じゃん…
今は僕かもしれないけど、いつか女の子に戻っちゃうかもしれないじゃん…」
涙が出てきてそれを拭う。
泣いたってなにも変わらないのに。
「…ごめん俺が悪かった。俺さ、今すごい嫌なやつなの。
昨日、長谷部先輩と優紀のこと想像してやきもち妬いた。ただの想像でだよ?
そんな中の今日だったからイライラしてんの全然収まんなくて。
…ほんとごめん、言いすぎた。」
颯斗くんは眉を下げて僕を見る。
いつものかっこよくて頼りになりそうな颯斗くんじゃない。
「俺、優紀の中で恋人としても友人としても一番になりたい。
他の人が入りこむ余地がないくらい優紀の頭ん中にいたい。」
こういう言い方はなんだけど、こういう普通な面が見えてホッとした。
いつも僕ばっかりが好きで好きで仕方ないような気がしてたけど、こうして嫉妬してその感情を表に出してくれると同じ気持ちなんだと再確認する。
僕は颯斗くんが他の人と仲良くしてるところを見たことがないから、嫉妬しようもないんだけど。
でもきっとそういう現場を目撃したら同じように嫉妬すると思う。
思うんじゃない、絶対する。
人と喧嘩なんてしたことないのに、よりにもよってこんなに好きな人と喧嘩するなんて。
颯斗くんは僕の一番になりたいって言ってくれたけど、とっくに一番の場合はどうすればいいんだろう。
「ねぇ颯斗くんは僕の中でずっと一番なんだけど、そういう場合はどうしたらいいの?」
「――…その顔やめて、可愛い。」
やめてって言ったって。僕にはいつもの顔なんだけど。
颯斗くんは僕を抱きしめて肩に顔を埋めると、しばらく何も言わずに黙っていた。
「…一番って、ほんとに一番?長谷部先輩よりも?」
「うん、長谷部よりも大好きだよ?長谷部は友達、颯斗くんは恋人でしょ?
僕ね、ずーっと颯斗くんのこと考えてるんだよ?
颯斗くんのこと考えすぎて大好きな本が全然集中して読めないの。
この積んでる本じゃ証明にならないかな…?」
「んーん、もう大丈夫。優紀が本の虫なの知ってるからそれだけで分かるよ。
さっき嫌なこと言ってごめんな。」
僕もごめんね、と謝って仲直り。二人で抱き合ってキスをした。
喧嘩はしたくないけど仲直り出来たときの甘い雰囲気は好きかもしれない。
…なんて甘い考えを僕はあとで後悔することになるのだった。
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