シスと話そうと決めたものの、いったい何から話せばいいのか。それとなく聞ければいいが、ガルシフはなかなか話せずにいた。 「ガルシフ」 　背後から声をかけられる。ガルシフはそちらへ視線を向けた。 「シス」 　今し方、どうやって話を切り出そうかと悩んでいた本人がそこにいた。シスはぼんやりとガルシフを見ている。 　ガルシフはシスが部屋にいることに声をかけられるまで気づかなかった。ただ、シスが気配なく現れるのはいつものことなので、あまり驚きはしない。それよりも少し気になることがある。 「どうしたんだ、シス」 　気のせいでなければいつもより反応が鈍いような気がする。聞けば、シスはどこか怠そうにガルシフのそばによった。そのままガルシフの腰を抱き寄せ、首元に顔を埋める。 「……しても、いいか」 　熱い吐息を溢しながらそう言った。 　熱い。腹の中がどうしようもなく熱い。それは奥へ奥へと進んでいき、中からガルシフを蹂躙する。 「ちょっ、と…まっ……ん」 　大きな口がガルシフの口を覆う。唇を吸われ、舌を吸われ、縫い付けるように寝台の上に押さえつけらる。そして、逃がさないとばかりに熱いそれをさらに奥へと押し込められる。 「ん、んっ」 　奥を優しく突かれ、それを何度も繰り返される。息継ぎもままならず、ぐずるようにいやいやと首を振るが、一瞬離れたと思ったらまたすぐに口を吸われる。気持ちよくて、苦しくて、けれどやはり気持ちよくて、気づけば自分から口づけをねだっている。 「ふっ、本当にガルシフはこれが大好きだな」 　そう言って、シスは再びガルシフに口づける。先ほどよりも激しく、長く、角度を変えて何度も喰らう。 「……ん、んんっ」 　甘く、くぐもった声が溢れる。じゅぷっと卑猥な水音を立ててシスの舌が離れた。 「動くぞ」 　言いながら、シスは自身のそれをガルシフのそこへと打ちつけた。 「っ、ああっ！」 　 　衝撃でガルシフが声を上げる。シスはガルシフのよく引き締まった腰を掴み、小刻みに動かす。その度にガルシフが「あ、あ」と艶やかな声を漏らす。 　次第にシスの動きが大きくなっていく。その動きに合わせてガルシフの体も揺れ動く。そして、一際大きくシスが腰を打ちつけた。 「あああっ！！」 　ガルシフの象徴から勢いよく白濁が吐き出される。ビクビクと体を痙攣させガルシフは果てた。それから少し遅れてじんわりと腹の奥に熱が広がるのを感じた。 　思考が溶けていく。 　 　肌と肌がぶつかり合う。むせかえるような性液の匂いと、艶やかな悲鳴が混じり合う。縦に横に揺さぶられ、逃げようにも逃げられず、先ほどからガルシフの視界には火花が散り続けている。 　もう何時間こうしているだろうか。シスの欲望は止まることを知らず、ただひたすらにガルシフを貪り続けている。その様子はまるで腹を空かした獣のようで、いったいいつになったらその腹は満ちるのかガルシフにはわからない。 「ガルシフ」 　耳元でシスが名前を呼ぶ。幾度となく果てた体はそれだけで簡単に快楽を感じてしまう。 「すまない、まだ終われそうにない」 　その言葉を最後に、ガルシフは意識を失った。 ＊ 「爛れてるな」 　そう呟いたのは無意識だった。 　結局ガルシフは朝になるまでシスに離してもらえなかった。意識を失った後もシスはガルシフを抱き続けていたようで、起きた時にはシスのそれがガルシフの中に入ったままだった。そのせいで、未だ何かが尻に入っているような感覚がある。 　ガルシフは、はあ、とため息をつく。今この場にはガルシフしかいない。シスはすでに隣の自室に戻っており、どれだけ大きなため息を吐こうが気にする者はいない。 （どうしたらいいんだろうか） 　シスが発熱するたびにガルシフはシスに抱かれている。それ自体は別に問題はない。抱けと言ったのはガルシフ自身であるし、シスに抱かれることは嫌いではない。ただ、治療行為だとはいえ、本来ならば護衛が任である護衛騎士がその護衛対象に抱かれ続けるのは良くないのではないかと今更ながら思い始めてきた。 　シスやガルシフをよく知る者たちは比較的理解を示してくれているが、批判的な意見も当然あり、裏で貴族たちから「王の愛人」とガルシフは呼ばれている。さらに言えば、その体で王を誑かし、ユウエンから護衛騎士の座を奪った卑怯者として一部の騎士から非常に嫌われている。 　別にガルシフ自身は何を言われようが構わないと思っている。ただ、自分のせいでシスが悪く言われるのは我慢ならない。 「はあ」 　再びため息をつくガルシフ。 （結局、昨日はシスにあの話できなかったな） 　体も思考もぐずぐずの状態では当然話などできない。昨日は仕方がなかった。とはいえ、なるべく早くシスと話をしなくてはとガルシフは思った。