4 / 111
第4話 輿入れですか?
1ー4 俺のこと
俺は、母さんが落ち着くとゆっくりと頭の中の整理をした。
この世界では、淫魔とされているアンギローズだったが、『闇の華』には、何人かのアンギローズが登場していた。
1人は、もちろん主人公。
もう1人は、主人公の継母だった人。
そして、主人公の恋敵である少年。
でも。
その中にアンリなんて名前のキャラは、いなかったし!
じゃ、俺、モブなの?
モブなのにアンギローズ?
男のアンギローズは、希少で価値が高い。
だから主人公は、売られちゃうんだし!
なのに、モブでアンギローズ?
なんでですか?
ともかくモブ確定しているわけだし、俺は、母さんと2人、目立たないようにこっそりと生きていこう。
そう決意した頃、兄ギードの奇行が始まった。
俺は、心底怯えていた。
だって。
この世界。
『闇の華』は、BL世界だし!
もしかしたらモブでも実の兄になんかされそうじゃん!
そんなこともあって俺は、必死に堪えていた。
何事もなく平穏に!
できれば母さんと2人、屋敷を出てどっか田舎で平穏に暮らしたい!
そのために俺は、俺になってからというものずっと金を貯めてきていた。
まあ、たいした金額じゃないがな。
なにしろ、子供だし。
仕事っていっても屋敷で使われてもなんにもならないし。
だから、俺は、使用人たちの隙を見ては屋敷の外へと出掛けるようになった。
外で俺は、ちょっとした手間仕事をしては小金を稼いだ。
最初は、レンガ運びとか溝掃除。
だが、酒場の楽士と仲良くなってからはギターとよく似たランドリンという楽器を弾けることがわかってその楽士たちと一緒に楽団を作って酒場で演奏するようになった。
こんなことが父たちにばれたらただじゃすまないが、母さんの協力もありなんとか今まで隠してこれた。
とにかく!
俺が言いたいのは、今すぐ屋敷を出ても俺と母さん2人ぐらい生きていけるってこと!
「母さん、一緒に逃げよう!」
だが。
母さんは、うんとは言わなかった。
それは、母さんの実家がこの子爵家の世話になっているからだ。
この子爵家は、金だけは持ってるんだよ!
母さんは、涙を浮かべて俺を見つめた。
「アンリ、あなただけ、逃げなさい」
それは、できない。
もし、俺だけが逃げたりしたら母さんが酷いことになりそうだしな!
結局、俺は、大人しく嫁に行くしかなさそうだ。
そう思っていたとき、事件が起きた。
ともだちにシェアしよう!

