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第5話 輿入れですか?

 1ー5 支度金  俺が嫁に行くことになった相手は、グレイスフィールド伯爵という貴族で母さんが言うには王都でも有名な遊び人らしい。  うん?  グレイスフィールド伯爵?  俺は、はっと気づいた。  グレイスフィールド伯爵っていうと『闇の華』に出てくる主人公の父親じゃね?  てことは、俺、主人公の継母?  でも、継母は、女性だった筈!  なんで、俺?  なんでも遊び人の伯爵が屋敷の管理と息子の世話をしてくれる嫁が欲しいとかいったとかで、それを聞いた父が伯爵のコネ欲しさに名乗りを上げたんだとか。  ほんと、余計なことを!  でも、決まってしまったものは、仕方ない。  しかし、確か、継母は、ワガママ放題したあげくに主人公をいじめて後々に断罪されて追放されるんじゃ?  追放、か。  俺は、にんまりと笑った。  追放、大歓迎だな!  そのためには、もともとの話し通りに伯爵のお飾り妻になる必要がある。  まあ、遊び人なら俺のことそんな興味持たないかも。  それどころかまぐろを決め込んでれば嫌われて放っておいてくれるかもしれないし!  きっとアンギローズだからって面白がられるだろうけど、それも最初のうちだけだ。  ずっと大人しくされるままになってれば遊び人の伯爵は、俺への興味を失う筈。  でも、アンギローズの男は、珍しいからきっと離縁はされないだろう。  物珍しさにちょっとした置物的に手元に置いてもらえるのに違いない。  実際、『闇の華』の継母もそうだった。  継母は、女の人のアンギローズだったけど、それでも珍しいからって大事にされてたし!  俺は、父にちゃんと嫁にいくかわりに母さんの処遇の保証を約束してもらった。  もちろん、ちゃんとした契約書でな!  それによると俺が嫁にいった後は、母さんは、実家に戻ることを許されることになっていた。  母さんの実家は、貧しいが母さんが実家に帰った後もちゃんと支援は続けられることになった。  なんでドケチの父がこんな契約をほいほいしたかというと伯爵からの支度金がたんまりと入っていたかららしい。  「これでいるものを買いなさい」  父が俺にくれたのは金貨3枚だけだった。  「ロートルワーズ子爵家の者として恥ずかしくないように、な」  俺は、黙って頷いたけど、父が背中を向けるとあっかんべをした。  何が、ロートルワーズ子爵家の者として恥ずかしくないように、だ!  

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