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第8話 輿入れですか?
1ー8 グレイスフィールド伯爵家
俺をのせた馬車は、王都の貴族街の中をすべるように走り抜けていく。
ロートルワーズ子爵家から30分ほど離れた場所にグレイスフィールド伯爵家の屋敷はあった。
周囲は、高位貴族の屋敷が多いらしくどの家もみな、重厚な門構えで知らず知らずの内に緊張してくる。
馬車がグレイスシールド伯爵家の門をくぐると俺は、窓の外を見て胃が重くなるのを感じてしまう。
グレイスフィールド伯爵家は、貴族の中でも名門と呼ばれる家の1つだ。
ちょっとした森といったような庭園の中を馬車でしばらく進めばようやく伯爵家の屋敷が見えてくる。
うん。
なんだか屋敷というより城って感じだな。
グレイスフィールド伯爵家は、かつて武勲をたてたご先祖が始まりだときいている。
今では、その片鱗もないようだが、この屋敷は、その頃の面影をとどめているのだろう。
屋敷の馬車停めに馬車が停車するとドアが開いた。
「グレイスフィールド伯爵家にようこそ」
白髪のメガネをかけた鋭い目付きの執事のおじさんが俺を品定めするようにじろっと見つめていて俺は、息を飲んだ。
帰りたい
そう思う自分を叱咤して俺は、馬車から足を踏み出した。
執事のおじさんが手をとってくれた。
冷たい、固い手だった。
「ありがとう」
俺は、そっと手をひく。
執事は、慇懃無礼に礼をとる。
「私は、グレイスフィールド伯爵家で執事をつとめております、クリート・ラトグリフと申します。お見知りおきを」
「アンリ・フランソワ・ロートルワーズです。よろしくお願いします」
俺がぺこりと頭を下げたのにラトグリフは、ふん、と鼻を鳴らした。
「こちらへ」
玄関先には、ラトグリフの他には、数人の使用人しかいなかった。
以外と伯爵家は、使用人が少ないのかな?
とか俺が思っていると先を歩いているラトグリフがちらっと俺の方を振り向く。
「この時間、使用人たちは、忙しくてお出迎えに出られず申し訳がございませんでした、アンリ様」
何?
新しい伯爵家の嫁を向かえるよりも大切なお仕事ってなんですか?
俺は、そんな気持ちを押し隠して無言のままラトグリフの後をついていく。
赤い絨毯の敷き詰められた廊下は、薄暗くてカビ臭い匂いがした。
壁には、いくつもの肖像画がかけられていて俺は、ちらちらとそれを見ながら歩き続けた。
なんだか、この家のご先祖様たちに非難されているようで気持ちが悪い。
ラトグリフは、俺を2階にある部屋に通した。
そこは、小綺麗で広々としている白を基調とした飾り気のない部屋だった。
おそらくここは、客室だ。
「夕食までごゆっくりされてくださいませ」
そういってラトグリフは、俺を残して部屋を去っていった。
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