14 / 111
第14話 継母は、難しい
2ー4 冬の庭で
「奥様のせいで執事長に叱られちゃったじゃないですか!」
俺を庭に案内しながらそのメイドさんは、ぶつぶつ文句を言った。
「もし、首になったらどうしてくれるんですか!」
いや。
君なら、どこでもやっていけそうだけど。
という気持ちを圧し殺して俺は、にっこりと微笑んでみせた。
「ごめんね、えっと……」
「ルーシーです、奥様」
その茶髪の目立たない印象のメイドさんは、まだ怒っている様子だった。
いや。
俺も悪気があったわけじゃないし。
ルーシーは、怒ったまま俺を庭へと案内した。
冬の夜明けだ。
霜に覆われた庭は、白銀色に輝いて美しかった。
俺は、ほぅっと息をついてから、ぶるっと体を震わせた。
寒い!
普段着のまんまなので外は、寒かった。
両手で体を抱いて震えている俺を見てルーシーは、ふふん、と笑った。
「こちらです、奥様」
ルーシーは、俺を庭の隅にある畑へと案内すると空の籠を渡した。
「これに野菜をとって入れてください」
はい?
俺は、何も生えていない荒れ地とかしている畑を前に立ち尽くしていた。
ルーシーに確認しようとするともう、彼女は、姿を消してるし。
俺は、ふぅっとため息を吐いた。
ふわりと白い吐息が舞って俺は、寒さにまた震える。
これは、嫌がらせ?
俺は、荒れ地を前に考えていた。
どうしろっちゅうの?
でも。
俺は、畑を見回した。
ところどころに小さな緑の葉が見える。
近づいてみるとそれは、ふきのとうだった。
まさかの山菜?
俺は、広い畑を歩きながらふきのとうを採集していった。
すごいな、伯爵家。
畑でふきのとうが採れるなんて。
というか、山菜なんてこの世界にきて初めて見たし!
籠いっぱいふきのとうを採集する頃には、日差しも暖かくなってきていた。
「何をしている?」
声に振り向くとそこには、リュートが立っていた。
部屋着姿に無造作な黒髪。
金色の瞳が朝日にきらきらと輝いている。
完全無欠の美丈夫だな!
くつろげている襟元から逞しい胸板がうかがえる。
「あ、あの、山菜をとってました!」
籠にいっぱいのふきのとうを差し出した俺を見てリュートは、ちっと舌打ちした。
「お前は、バカなのか?」
ばさっと音がして俺の全身が黒いガウンに覆われる。
リュートは、俺にガウンをかけると肩を抱いて屋敷へと連れていこうとする。
「すっかり冷えてしまって。風邪でもひいたらどうする気だ?」
ともだちにシェアしよう!

