18 / 111

第18話 継母は、難しい

 2ー8 番✳  軽くちゅっとキスしただけだった。  なのに。  一瞬で脳が焼かれるぐらいの衝撃が走った。  唇から劇薬が流れ込んでくるような感覚。  「ふ、あっ」  まずい!  俺は、すぐに体を離そうとしたが、それをリュートは、許さなかった。すぐに俺の頭の後ろに手を当てると俺を引き寄せた。  「ん、ぐっ!」  リュートの胸に手を押し当てて体を離そうとする俺をリュートはぎゅっと抱き込む。  リュートの厚い舌が唇を割って入り込んでくるのを俺は、拒めない。  ちゅくちゅく、と水音が聞こえてくるのを痺れた頭で聞きながら俺は、何もできずにただ、リュートに貪られていた。  リュートは、俺の舌を吸い、絡めとり、俺を夢中で味わっていた。  「ふっ、あっ……」  ようやく俺が解放された時、俺の口の端から溢れる唾液をリュートは、舌で拭いとる。  ぴちゃ、っという音に俺は、体を震わせ熱い吐息を漏らした。  「まったく……油断も隙もないな」  リュートが耳元で囁く。  「アンギローズは、今までにも数知れぬほど抱いてきたが。こんなのは、初めてだ」  リュートは、俺を膝の上に横抱きにすると俺の頬にキスした。  「今までに男に抱かれたことは?」  俺は、ぶんぶんと、頭を振る。  そんなことは、したこともない。  キスだって。  「……初めて、だったんだ……」  「そうか」  リュートの瞳がぎらっと輝く。  「アンギローズの運命の番など、信じてはいなかったが……これは、グレイスフィールド伯爵と話す必要がありそうだな」  はい?  俺は、ぼんやりとしたままリュートのことを見上げた。  何を、話すって?  「お前をグレイスフィールド伯爵から奪う!」  リュートが俺を射るような瞳で見つめた。  「お前は、私のために存在する者だ」  「はひっ?」  俺は、一瞬で正気に戻っていた。  これ、やばいんじゃね?  とんでもないヤンデレに番宣言されてる?  それ、俺じゃないし!  あなたのお相手は、主人公のロゼス君でしょ!  俺は、リュートの膝の上から逃れようとしたが、リュートは、離そうとはしなかった。  「離してっ!俺はっ!」  そのとき、部屋のドアが開いてラトグリフが現れた。  真っ青な顔色のラトグリフは、俺たちに震える声で告げた。  「グレイスフィールド伯爵が!亡くなりました!」 はいっ?  俺は、ぎょっとしてラトグリフを見上げた。  なんですと?

ともだちにシェアしよう!