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第27話 継母の心得
3ー7 旅立ち
「いえ、リトに領地の話を聞いたのでちょっと行ってみたいなと思っただけです」
俺は、お茶のカップを手にとり中を覗き込む。琥珀色のお茶に俺の姿が揺れているのをぼんやりと眺める。
「それに俺は、形だけとはいえ伯爵代理になったわけですから領地を気にするのは当然のことです」
ちらっと横を見るとロゼス君がなにやら考え込んでいる様子。
何かたくらんでると思われてるのかな?
俺が領地に行きたい理由を告げようとしたら、リュートが口を挟んだ。
「いいのではないかな」
リュートがにっこりと笑みを浮かべる。
「確かに、今、災害に苦しんでいる伯爵領を放置するべきではない」
「でも!」
抗議しようとするロゼス君を遮ってリュートが続けた。
「だが、アンリだけでは不安なのはもっともだ。私が同行しよう」
はいっ?
俺は、弾かれたようにリュートの方を見る。
それは、なんか嫌かも!
「失礼ですが、俺だけでも」
「アンリは、今や伯爵代理であり大切な存在だ。警護もかね、私が同行するのは当然のことだろう?」
リュートが言うので俺は、困ってしまい周囲を見回した。
目があったラトグリフがすっとテーブルに近づくと口を開いた。
「確かに、領地をこれ以上放っておくわけにはいかないですし、ラインズゲート侯爵のせっかくのお言葉ですし。いいのではないでしょうか?アンリ様」
有無をいわさぬラトグリフに俺は、しぶしぶ頷いた。
「では、さっそく今日にでも出発しようか、アンリ」
リュートが満面の笑みを浮かべているのに、俺は、なんだか背筋がぞっとしていた。
やばい!
絶対にエロいこと狙ってる!
俺は、涙目になっていた。
俺、何されちゃうの?
「身の回りのことをさせるためにリトも一緒に行かせましょう。ああみえてもなかなかの手練れですし、連れていけばいい護衛にもなるでしょう」
リト?
俺は、壁際に立っていたリトを見た。
リトは、黙って礼をする。
リュートが小さく舌打ちした。
うん。
なんでもいい。
俺を守ってくれそうな者なら、なんでもいいよ!
俺は、部屋に戻るとベッドの下から鞄を取り出しそれに着替えを入れていった。
しばらくしてリトが部屋にきたので荷物は、もうまとめたことを伝えると彼は、ぎょっとした様子で俺を凝視した。
「旅行の荷物ですよ?そんな簡単にまとまるものですか?」
俺は、ベッドの上に置いていた鞄を指した。
嫁入りのときもこれ1つで来たんだし。
俺がそう言うとリトは、深いため息をついた。
「わかりました。他の荷物は、私が適当に用意しておきます」
そうなの?
俺は、鞄をリトに預けるとリビングへと向かった。
ロゼス君は、学校だし、リュートは、旅行の準備でいったん自分の屋敷に戻ってるし。
俺は、リビングで1人のんびりとお茶を飲むことにした。
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