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第28話 継母の心得
3ー8 宝剣
リビングのソファに腰かけて俺は、ぼんやりとこれからのことを考えていた。
領地に行っても、俺には何もできないのかもしれない。
でも、何か、できるかもしれない。
俺は、アンギローズだ。
半魔とも言われるほどの魔力量を持ち、魔法にも秀でているアンギローズであることを今まで俺は、隠してきた。
だけど。
ほんとに困っている人がいて、それを助けられるのが俺だけだというなら。
俺は、できるだけのことをしたい!
でも。
俺は、アンギローズであることを隠すためにほとんど魔法を使うことなく生きてきた。
この世界では、貴族は、15歳の王立貴族学院への入学時に魔法適性検査を受けることになっている。
しかし、俺は、学院にも行ってないし。
ずっと子爵家で奉公人みたいにして働くか、それか、街で小銭を稼ぐかの毎日だったし。
そういえば俺と一緒に行くとか言っているリュートは、どんな魔法を使えるんだったっけ?
俺は、考え込んだ。
前世の記憶の中のリュートは、エロ特化のキャラだったからな。
なんか、触手とかだしてなかったっけ?
その触手で嫌がる主人公にあんなことやこんなことをしてたような。
俺は、思わず顔が熱くなってくるのを感じていた。
ちょっ!
やめやめ!
考えるな、俺!
この世界は、もとの世界とは違う。
まず、前世の『闇の華』の世界では、グレイスフィールド伯爵は、死ななかったし、継母は、俺じゃなかった。
リュートは、主人公に夢中だったしな。
くっ!
俺は、爪を噛んだ。
なんでよりによって俺があいつの愛人?
「アンリ?」
不意に呼び掛けられて俺は、びくっと体を強ばらせた。
いつの間にきたのか目の前にロゼス君の姿があった。
「ロゼス、君?」
なんで、ロゼス君がここに?
てか、学校に行ったんじゃないの?
「これを、渡したくて」
ロゼス君が俺に白い布に包まれた何かを渡してきた。
布を開くとその中には銀色の美しい短剣が入っていた。
「これは?」
「これは、グレイスフィールド伯爵家に代々伝わる護身用の短剣だ」
はい?
俺は、短剣を捧げ持って目をぱちくりしていた。
「なんで、そんな貴重なものを俺に?」
「これは、代々の伯爵を守ってきたもの、だ」
うっすらと頬を染めて俺に話すロゼス君を見上げて俺は、戸惑っていた。
正直、俺は、剣術を習ったこともない。
これでどうしろと?
「なら、これは、ロゼスが持っていたほうがいい」
俺は、短剣をロゼス君に返そうとした。
だって、俺が持ってても宝の持ち腐れだし。
ロゼス君は、俺から目をそらす。
「僕が、あなたに持っていて欲しいんだ!」
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