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第31話 愛人契約

 4ー1 馬車の中※  すっかり涙目になっている俺の隣に席を移ってきたリュートは、俺の腰に手を回して耳元で囁いた。  「そんなに怯えることはない。私だって初心者相手に無理はさせるつもりはないからな」  そ、そうなの?  リュートに耳たぶを食まれて俺は、びくっと体を震わせる。  てか、せっかくの広い馬車なのになんでこんな密着してるの?  広々使おうぜ!  俺は、ロゼス君の護身用の短剣を握りしめてぎゅっと身を固くした。  耳をくすぐるリュートの低い笑い声になぜか、俺の体の奥が熱くなってくる。  「いくらアンギローズとはいえ初めから淫らに振る舞えるわけではないからな」  リュートが俺の顎に手をかけ自分の方をむかせると俺の顔を覗き込む。  金色の瞳が色情に揺らいで妖しい輝きを増している。  「じっくりと自分が何かということを教えてやろう」  「あ、あの、ここで、ですか?」  俺は、ロゼス君の短剣を胸元に握りしめたまま涙で潤んだ瞳でリュートのことを見つめた。  いや。  どこでされても同じかもしれないけど、馬車の中っていうのは、なんか、嫌かも!  リュートは、俺の目尻にちゅっと口づけすると口許を綻ばせる。  「ここじゃ、嫌なのか?」  「んぅっ!」  リュートの手が俺のシャツの裾から入ってきて胸の頂をきゅっとつまみ上げる。  俺は、狼狽していた。  痛みだけじゃなくて、小さな快感を感じてしまったのだ。  うそだろ?  こんなとこで?  「ここでなければどこがいいんだ?アンリ」  リュートの体の奥までも痺れさせるような声に俺は、小さく呻いていやいやをする。  そんなのどこだって嫌に決まってるしっ!  「言わないならここで抱く。それでもいいのか?」  「ひぁっ!」  リュートは、いつの間にか俺のズボンの前をくつろがせて下履きの中に手を入れてきていた。  冷たいリュートの手にやわやわと揉まれて俺は、ぴくん、と背をそらす。  「んぅっ、そこ、はっ!」  「かわいいな、アンリ」  リュートがくすっと笑う。  「ここ、子供みたいだな」  なんですと?  俺は、涙の滲んだ目でリュートを睨み付けた。  俺は、もう、立派な大人だし!  暗に小さいっていってる?  もしかして、俺に喧嘩売ってるわけ?  リュートの金の瞳がふっと細められる。  「あぁっ!」  下半身から脳天まで突き抜けるような快感が走り、俺は、そのまま倒れそうになる。  「おっと!」  リュートが俺の背に手をあて座席にそっと横たわらせた。  俺は、激しい快楽に体をわななかせて涙を溢してしまう。  「あっ、あぁっ!……な、に……?」  

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