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第60話 新しい町

 6ー10 鉱脈  「いや、仕方がなかったんだ」  翌日。  俺は、リュートに抱かれて地滑りの現場を調査していた。  うん。  確かに、俺が魔力切れを起こしていたのだとしたら俺を救うためにリュートが魔力を注ぎ込んだのは間違いじゃない。  でも!  限度ってものがあるよね?  俺がもうダメっていってるのに、何度も何度もいかされて。  俺は、すごく怒っていた。  「この辺りです!」  俺たちを案内していたライゾさんが声を上げた。  俺は、リュートの腕の中から崩れ落ちた山肌を見上げた。  表面の土が洗い流されてすっかり下の地盤が覗いているようだ。  俺は、リュートの背中をバンバン叩いてもっと近づくように合図を出す。  叩かれたリュートは、すっかりしょげた大型犬のように俺の言う通りになっていた。  いや!  マジで耳が垂れてるのが見える?  俺は、土砂が流れた後に覗いている岩肌に目を凝らした。  あれ?  俺は、目をごしごしと擦った。  なんか、金色の光が飛び交ってる?  『あれは、ラムナズじゃな』  「わぁっ!」  突然、現れたイキナムチに俺は、思わず声を上げてしまう。  イキナムチは、ひょうひょうとした様子でリュートに抱かれた俺を見つめていた。  「ラムナズ?」  小声でぶつぶつ呟いている俺にリュートは、妙な顔をしつつも黙っていた。  『そうじゃ。ラムナズは、鉱物を好む妖精でな。おそらくここは、金の鉱脈があるの』  「金!?」  俺が急にがばっと体を起こしたのでリュートがぐらついたため、俺は、ぎゅっとリュートにしがみついた。  「ぅぐっ!」  リュートがおかしな声をだすのを無視して俺は、イキナムチに訊ねた。  「ほんとにここに金脈があるのか?」  「はいっ?」  ライゾさんがきょとんとして俺たちの方を振り向いた。  俺は、ちょっと考え込んだ。  この辺りに金の鉱脈が?  俺は、ちらっとリュートを見た。  目があってしばらく見つめ合う。  うん?  なんか、リュートの顔が赤い?  「ここに金の鉱脈があるとしたらリュート様は、どうします?」  俺が問いかけるとリュートは、即答した。  「もちろん、技師を手配して掘るさ」  「では」  俺は、にこっとして頷いた。  「そのように手配してくれますか?」  「!」  リュートがひゅっと息を飲んだ。  一瞬おいて頷く。  「もちろんだ!」  俺たちのやり取りを離れて見ていたライゾさんが訳がわからないできょときょとしているのに、俺は、にっこりと笑いかけた。  「安心してくださいね、ライゾさん。この町は、すぐに新しく甦りますよ」  

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