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第80話 始祖の再来
8ー10 発明ですか?
赤茶色の屋根の洋館は、領主の館ということになった。
だが、広い庭には木も植えられてないし、家具もない。
当然、家具とかも材料もないので俺が造ることになるわけだが、さすがに今日は、もう、疲れた。
というか俺の体は、魔力を欲してうずうずしていた。
町のどの家に誰が入居するかは、ライゾさんたちに任せることにして俺とリュートは、領主の館に入った。
屋敷の中は、板張りになっていて2階建ての豪華な造りになっていた。
まあ、家具がなくてがらんとしてるのがなんか物悲しいけどな。
俺たちに続いて入ってきたリトがきょろきょろと室内を見渡している。
「いろんなものが要りようですね、アンリ様」
「それは、明日にでもなんとかするよ」
俺は、もう限界で。
体が火照って。
リュートの首に両腕を回して熱い息を吐く。
「あの、俺の部屋に連れていって、くれますか?リュート様」
「ああ」
リュートが頷くと階段を上がっていく。
2階も1階と変わらない豪奢な内装だった。
階段の手摺とかすごい彫刻がされてるし!
あれは、龍?
「なかなか凝った造りだな。気に入ったよ、アンリ」
リュートがにっこりと微笑む。
うん。
俺もまんざらじゃないし。
部屋数もかなりのものだし、大きな窓とかもあって家の中が明るいのがいいな。
リュートは、2階の角にある大きな部屋へと俺を連れていった。
そこは、広々とした部屋で、いくつかの扉があった。
うん?
俺は、扉の向こうが気になった。
リュートがそっと俺を下に下ろしてくれたので俺は、扉の方へとよろよろと歩いて行った。
まず、1つ目の大きな扉の向こうは、どうやら風呂場のようだった。
脱衣所らしき場所とは隔てられて青みがかった美しい石の床の小部屋には、木製の大きな風呂があった。
いや!
他に家具なんてないのに、これだけ造ってるなんて、どんだけ風呂好きなの、俺!?
次に、中くらいの扉を開けると、そこには、棚が造られている納戸があった。
さらに、次の少し小さめの扉を開くと、そこには、なんと!
「もしかして水洗トイレ?」
俺は、歓声を上げてしまった。
この世界には、水洗トイレはない。
だいたいは、坪みたいなものが仕切りがある小部屋に置かれていてそこに用を足すことになっていた。
「すいせんトイレ?」
俺の後ろについてきていたリュートが頭を傾げている。
「それは、なんだ?」
俺は、白い陶器の蓋をあけると中を見せながら説明する。
「ここで、その、用を足してこの紐を引っ張ると水が流れるようになってるんだ」
俺は、実際に天井からぶら下がっている紐を引っ張って見せる。
ざぁっと音がして水が流れる。
黙って見ていたリュートがすごく驚いた表情を浮かべて俺を見る。
「これは…すごい発明だぞ、アンリ!」
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