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第87話 黄金の小都

 9ー7 宝具  午後のあいた時間で俺は、イキナムチとゆっくりと話すことにした。  というのもこれからのクルシキをどうしていくべきか、俺は、悩んでいたからだ。  イキナムチは、俺を町を守るために造った防壁の上に連れていった。  地上から10メートルぐらいの高さがある石造りの防壁の上には、見張り用の通路がある。  そこで俺とイキナムチは、町の外に拡がる沼地を眺めていた。  『これまでは、この町は、我が守っていた。じゃが、この壁が造られ魔物から町を守る必要はなくなったわけじゃ』  「でも、イキナムチ様は、この町を守護する神様なんですよね?」  俺の問いにイキナムチは、頭を振った。  『我は、もともとは、この地の神ではなかったのじゃ。たまたま近くにいた時にアララギの力に魅せられてこの地の神となったんじゃよ。もともと、我は、まつろわぬ放浪の神なんじゃ』  「では、この地を離れられてしまうのですか?イキナムチ様」  驚いているとイキナムチは、表情を曇らせる。  『いや。我は、この地を離れられぬ』  どうやらイキナムチは、アララギとの約束に縛られてこの地から離れられなくなっているようだった。  『じゃから、我は、もう、この地を離れることを諦めておったんじゃが』  イキナムチが俺をじっと見つめる。  『我の御子であるお主が来たことで話が変わってきたのじゃ』  はい?  俺は、まじまじとイキナムチを見つめた。  イキナムチは、俺に話した。  『お主と共にあれば我は、この地を離れられるじゃろう。ただし』  イキナムチがふぅっ、とため息をつく。  『我の依り代となるものが必要なのじゃが』  イキナムチの依り代?  俺は、小首を傾げる。  「御子である俺の他に依り代が必要なのですか?」  『そうじゃ』  イキナムチが言うには、神霊の依り代となりうる物は限られているらしい。  なんでも由緒正しい宝具しか神霊の依り代にはならないのだとか。  『そのような宝具があれば我は、ここをお主とともに離れることができる。つまり、お主が望むならこの領地全体の守護者となってやってもよいのじゃがな』  ちらっとイキナムチが俺をうかがい見る。  『しかし、我に相応しいような立派な宝具などお主ら、持ってはおらんしな』  「宝具、ですか?」  俺は、ちょっと考えてから上着のうちポケットからロゼス君から預かっている短剣を取り出した。  「こんなものならありますが」  『それはっ!』  イキナムチが声を上げる。  『何百年も前に失われたアララギの剣じゃ!』  マジですか?  俺は、短剣をじぃっと見つめる。  これが、始祖アララギの剣?  

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