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第95話 故郷
10ー5 借金?
それから3日3晩、俺たちは、寝食も忘れて必死に帳簿と格闘した。
俺は、前世で学んだ貸借表を簡単にリュートとロロに説明した。
2人とも頭がいいので俺が説明した方法をすぐに理解してくれた。
それに従って帳簿を記入していく。
まず、収入のみを書き出していき、それとは別に支払いやら借金を書き出していく。
まとめて表にしてみるとグレイスフィールド伯爵家が瀕死の状態であることがわかった。
「これじゃ、今年の税も払えません!」
ロロが言うので俺は、うーん、と呻いた。
「もう少ししたら金の採掘が始まるんだけどな」
「それは、そうですが」
ロロが暗い顔をする。
「借金とかもありますし、このままだと、アンリ様、借金奴隷にされちゃいますよ?」
ううっ!
俺は、ぐっと拳を握りしめる。
リュートが口を挟んだ。
「借金というのは、ラドリー子爵のものだろう?それなら私が肩代わりした筈だが?」
「それとは別に、ロートルワーズ子爵からもかなりの借金が」
はい?
俺は、ぱちぱち、と瞬きした。
俺の実家ですか?
そんなこと、きいたこともなかったんだが。
というか、俺が嫁に来るときかなりの金を父は、グレイスフィールド伯爵から受け取っていた筈。
どういうこと?
「ロートルワーズ子爵といえば、王都の屋敷のリトグリフさんから連絡がきてましたよ。なんでも、ロートルワーズ子爵がアンリ様に会いたいといって何度も屋敷を訪ねてきているとか」
「あの人が?」
俺は、考え込んでしまう。
あの父が何をたくらんでいるのか?
グレイスフィールド伯爵家に貸し付けしてて、そこに俺を嫁がせたってことは。
もしかしてグレイスフィールド伯爵家をのっとるつもり、とか?
「王都に連絡して少し、ロートルワーズ子爵を探らせよう」
リュートが俺の肩をぽん、と叩いた。
俺は。
暗澹たる気持ちだった。
また、あの父たちのもとに戻ることになるのか?
母があの家を出ることができたのなら、俺は、もう、あの家には戻りたくはない。
俺は、めまいがしてちょっとふらついてしまう。
「あぶない!」
リュートが俺を抱き止める。
「大丈夫か?アンリ」
「リュート様……」
俺は、ぶるぶるっと頭を振った。
しっかりしろ、俺!
俺は、顔を上げるとロロに指示を出す。
「ともかく!金の鉱脈のこと、急いで差配して。それから、この領都ジルトニアで、紙を作るから!」
「はいっ!」
ロロが部屋から駆け出していく。
リュートが俺をじっと見つめる。
「紙作り?」
「ああ」
俺は、頷いた。
きれるカードは、何枚もあった方がいいからな!
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