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第96話 故郷
10ー6 紙
俺は、領都ジルトニアの町長であるタギラさんを屋敷へと呼び出した。
ちょっとくたびれたイケオジであるタギラさんは、白髪交じりの赤髪に緑の目をしている。
うん?
どっかで会ったことがある?
俺がまじまじとタギラさんのことを見ているとリュートが俺とタギラさんの間に割って入った。
「タギラ、今日は、ご苦労だったな」
「いえ、ご領主様方がお出でとお聞きしてご挨拶にと思っておりましたのでちょうど、ようございました」
タギラが俺を見てにっこりと微笑む。
あれ?
なんか、リトと似てる?
俺は、ソファに腰かけた俺たちのもとにお茶を運んできたリトをちらっと見上げる。
「リトは、確か、この辺の出身だったよね?」
リトは、俺にこくりと頷く。
「はい。俺は、この領都ジルトニアの出身です」
「じゃあ、タギラさんと知り合いだったりする?」
俺が問うと、一瞬、気まずい雰囲気が漂う。
リトは、ちらっとタギラさんをうかがってから、俺を見た。
「私の父親です」
マジで?
でも、それならなんでこんな気まずい雰囲気?
「私は、この人の元愛人の子ですから」
「リト!」
タギラさんが顔色を変えてリトに声を荒げる。
「何を言ってる!ご領主様の前だぞ!」
「アンリ様の前だと話せないことかよ!」
睨みあっている2人にリュートがこほん、と咳払いをする。
「リト、お茶をありがとう。もう、さがってもいいぞ」
「はい、ラインズゲート侯爵様」
リトがぺこりと頭を下げてから部屋を去っていった。
ソファに座り直したタギラさんがはぁっとため息をつく。
「申し訳ございません」
「いや。お前にも、リトにも事情があるのだろうからな」
リュートが何事もなかったかのように話を切り出す。
「ところで、このジルトニアには、どんな産物があったかな?」
「この町では、特に、何も。強いていうなら小麦を少々生産しておりますが。それが何か?」
俺は、ちらっとリュートを見てからタギラさんに話した。
「実は、この町で新しい産業を起こしたいと思っているんです」
「ほう。なんの産業ですか?」
タギラさんに問われて俺は、『創造』の魔法で作った和紙を数枚取り出してテーブルに置いた。
「これは?」
「紙です」
俺は、1枚とってタギラさんに手渡す。
「これからこの町で紙を作ろうと思っているんです」
俺は、紙作りについてざっと説明する。
タギラさんは、黙って耳を傾けていたが、やがて、口を開いた。
「わかりました。ご領主様がおっしゃるようにこの町で紙の原料であるコウゾを育て、紙を生産してみようじゃないですか」
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