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第102話 継母冥利につきますな!
11ー2 報告
王都の貴族街にあるグレイスフィールド伯爵家に俺とリュートが乗ったラインズゲート侯爵家の黒塗りの馬車が到着したのを出迎えたのは、ラトグリフ1人だった。
俺は、リュートの手をとり馬車から降りるとラトグリフにぺこりと頭を下げた。
「留守の間に父が……ロートルワーズ子爵が迷惑をおかけしたとのことで、申し訳ありませんでした」
「とんでもない!」
ラトグリフが無表情に俺に礼をする。
「アンリさまには、グレイスフィールド伯爵家の窮状を救っていただき、感謝しかございません」
そうなの?
俺は、ラトグリフの後ろについて屋敷の中へと入っていった。
屋敷の中は、冷え冷えとしていて薄暗い。
俺は、ちらりとリュートのほうを伺う。
リュートは、ラトグリフに声をかけた。
「話があるので執務室の方へ来てくれるか?ラトグリフ」
小一時間後。
俺とリュート、それにロゼス君とラトグリフの4人が執務室のソファに腰かけてお茶を飲んでいた。
「ロゼス、今日は、学院は?」
俺が訊ねるとロゼスがにっこりと笑う。
「今日は、春の女神の祭りで休みですから。ご心配なく」
うん?
なんか、怒ってる?
無理もない。
ロートルワーズ子爵が来たことでみな、疑心暗鬼になっているのかも。
俺は、きちんと話さなくてはと思い、口を開いた。
「ロートルワーズ子爵の件は、俺も知らなくて。父がご迷惑をおかけしてほんとに申し訳なかったです」
「ああ」
ロゼス君がテーブルにカップを置くとふんと鼻を鳴らした。
「アンリが気にすることはない」
「近日中には、金を用意してロートルワース子爵に返すことになってます」
俺は、ちらっとリュートを見上げる。
リュートは、こくりと頷く。
「もう、金のことで不自由することはないだろう。領地では、金の採掘が始まっているし、紙もうちに出入りしている商会に持ちかけて夏頃までには、売り物になるだろうしな」
「本当にありがとうございました、ラインズゲート侯爵」
ロゼス君がぺこりと頭を下げる。
「侯爵のおかげで父が残した借金も肩代わりしていただき、その上、領地改革までもしていただき感謝しております」
「いや。礼ならアンリに言ってくれ」
リュートがひらひらと手を振ってから、俺を優しい眼差しで見つめた。
「アンリは、その力を使って見事に領地を再建した」
「アンリが?」
ロゼス君が疑い深い目で俺を見た。
リュートは、ごほん、と咳払いする。
「実は、アンリは、アンギローズなんだよ」
「アンリが?」
ロゼス君が目を丸くしている。
いや。
そんなに驚かなくても!
だって、ロゼス君もアンギローズじゃない!
だが。
ロゼス君は、俺をまじまじと見つめる。
「アンギローズ……初めて見ました。ほんとにいるんですね、男性のアンギローズが」
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