104 / 111
第104話 継母冥利につきますな!
11ー4 仕立て屋
リュートのいきつけの仕立て屋は、王都の大通りに面した一等地にあるコジャレた店だった。
店の主であるルーシーさん(男)が俺たちを広々とした応接室へと案内しソファをすすめる。
信じられないぐらいふかふかのソファに俺は、なぜか、リュートとロゼス君に挟まれて腰かけてしゅわしゅわと泡立つ果実酒とチョコレートのかかった果物を味わっていた。
「では、ちょっと採寸させていただきますので、こちらへ、どうぞ」
赤毛っぽい金髪をしたルーシーが俺を案内する。
カーテンで仕切られた個室で俺は、服を脱がさされ下履き一枚にされてしまった。
ルーシーは、俺の裸を見て口笛を吹く。
「あなた、愛されてるわね」
ルーシーは、そっと小声で囁いた。
俺は、ルーシーの視線に気づいて顔が熱くなる。
俺の体には、あちこちにリュートに愛された跡が残っていた。
ルーシーは、くすくすと笑った。
「あの冷血侯爵様が、ねぇ。長生きはするものね」
採寸しながらルーシーは、俺にリュートの話をしてくれた。
リュートは、ロゼス君と同じで若くして両親を亡くしたのだという。
「あの頃、リュート様は、周囲の大人たちの誰も信じないって感じでね。そのまま、大人になってしまって」
ルーシーが長い睫をぱたぱたと瞬かせる。
「それが、久しぶりに会ったら、なんだかうんと柔らかい雰囲気になっちゃって。これも、あなたのおかげなのかしら?」
「そ、それは」
俺は、顔を伏せる。
リュートが愛しているのは、俺じゃない。
リュートが変わったのだとすれば、それは、ロゼス君のせいだ。
そう思うと、なぜか、俺は、鬱屈したものを感じていた。
「あら、あら?」
ルーシーさんが首を傾げる。
「あなた、こんなに愛されてて、何を不安に思ってるの?」
「俺は、愛されてなんて」
俺は、震える声で呟いた。
なぜか、涙が溢れそうになる。
採寸が終わって、ルーシーさんは、俺をリュートとロゼス君のもとへとかえした。
2人は、なぜか、ソファに離れて腰かけてそっぽを向いていた。
あれ?
喧嘩してるの?
まあ。
仲がいい程喧嘩するっていうからな。
「できあがりましたらグレイスフィールド伯爵家へお届けいたします」
本来、こういう特注の服は、数週間とかかかるらしいが、ルーシーは、俺の服を3日以内に仕上げると言いきった。
「こんな可愛らしい方にいつまでもそんな適当な服なんか着せておくわけにはいきませんもの!」
ともだちにシェアしよう!

