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第106話 継母冥利につきますな!
11ー6 ギード※
「ん……」
頭が割れるように痛くて、俺は、顔をしかめる。
ざらつくシーツの上に俺は、寝かされていた。
ここは。
俺は、この天井に見覚えがあった。
そこは、俺が子供の頃から暮らしたロートルワーズ子爵家の離れの俺の部屋だった。
「なん、で?」
俺は、気分が悪かったがなんとかベッドの上に起き上がる。
「気がついたか?アンリ」
ドアが開いて腹違いの兄ギードが入ってくるのを見て、俺は、思わず身構えた。
ギードは、手にお湯が入った桶を持っていた。
「目が覚めたらお前が使いたがるかも知れないと思って、な」
ギードは、お湯の入った桶をベッド脇のテーブルに置くと自分は、俺が座っているベッドに腰かけた。
俺は、できるだけギードから距離を取ろうと後ずさる。
ぱっと確認するが服は、上着を脱がされていたが他は、乱れはなかった。
俺がホッとしているとギードが話し出す。
「手荒なことをして悪かったな、アンリ。だが、これも全て、お前のためだから」
はい?
俺が眉をひそめていると、ギードは、俺に手を伸ばしてきて俺のくるぶしに触れた。
そこには、銀色に輝く枷がはめられていた。
「お前、アンギローズだったんだな。どおりで俺を誘惑していたわけだ」
ギードがつぅっと俺の足を撫でる。
ぞわぞわっと悪寒が走るが、俺は、ギードが怖くて抵抗することができない。
「もう、たっぷりとあの家の連中に可愛がられたんだろう?アンリ」
ギードの息が乱れていく。
ギードは、俺の体を撫で回してはぁはぁっと呼吸を荒げる。
「アンギローズだものな。穢らわしい男たちに抱かれていたんだろう?」
恐怖に声も出せずにいる俺をギードは、ベッドに押し倒してのし掛かってくる。
「俺がすぐに清めてやるからな、アンリ」
首もとに吸い付かれて俺は、ようやく声を上げた。
「い、やだっ!止めて、くださいっ!」
「ははっ、照れてるのか、アンリ」
ギードは、俺のシャツを脱がせながら笑った。
「もう、芝居はいいんだ。お前がどんなに淫乱でも、俺は、お前を受け入れてやる」
ギードに体を暴かれて俺は、涙目になる。
いやだっ!
助けて、リュート!
その時、不意に大きな鼓膜が破れるような音が聞こえてギードが白目を向いて倒れ込んできた。
俺は、音の源へと目をやる。
そこには、銀色の短剣が浮いていた。
「イキナムチ様!」
『危ないところじゃったのぉ、アンリ』
短剣がふよふよと空中を漂って俺の方へと飛んでくる。
俺は、短剣を手に取ると抜き放って足につけられた枷をはずそうとした。
だが。
枷は、特別な魔道鉱を使ったもののようだった。
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