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第107話 継母冥利につきますな!
11ー7 抵抗
「どうしたものか」
俺は、ギードを押し退けてからベッドから降りた。
俺の部屋は、相変わらず殺風景でベッドの他には椅子が一つとテーブルが一つあるだけだ。
枷でベッドに繋がれていて部屋からは出られなくなっていた。
ここで『創造』を使って逃れることは可能だ。
だが、俺は、無理はしたくはなかった。
最初の頃に比べれば『創造』の魔法による魔力の急激な減少は、少なくなってきたが、それでももしも魔法を使って発情状態になってしまったら、と思うと怖くて。
リュートがいないところで迂闊に『創造』の魔法を使いたくはなかった。
『我が力を貸してやれたらよいのだが』
イキナムチを俺は、鞘に戻した。
イキナムチは、グレイスフィールド伯爵領の土地神だ。
領地を遠く離れた王都においては、その力を発揮するのは難しい。
俺は、頭を振った。
「父たちが何を企んでいるのか、様子を見ましょう」
俺は、今、グレイスフィールド伯爵代理だ。
その俺をこんな風に誘拐して監禁するということは、かなりの重罪になることは、誰から見ても明らかなことだった。
俺は、ギードをベッドからどけるとベッドに腰を下ろして部屋の中を見回す。
部屋の隅に皮のケースに入ったランドリンがあるのを見つけて俺は、ホッとしていた。
あのシトルにもらったランドリン。
拐われた時に奪われていたらどうしようかと思っていたのだ。
ランドリンを見つけてちょっと落ち着いたのか、俺は、空腹を感じていた。
あれからどのぐらいの時間が経っているのか。
俺の部屋には、窓がないので今、夜なのか朝なのかも、わからない。
微かにテーブルの上に置かれた魔道灯が辺りを照らしている。
「ぐっ……」
床の上に横たわっていたギードが低い呻き声を上げて体を動かしたので、俺は、体を強ばらせた。
ベッドの隅に体をよせる。
ギードが体をゆっくりと起こす。
「なんだ?今のは」
俺は、頭を振っているギードを凝視していた。
単純に考えれば今の俺には、ギードを倒して逃げることは簡単だ。
だが。
子供の頃からギードに与えられてきた暴力が俺の心を縛っていた。
ギードが俺を見て、口許に笑みを浮かべる。
「アンリ、今度こそ、私のものにしてあげるからね」
立ち上がったギードに俺は、体が震えていた。
怖い。
俺は、ギードに抵抗できるのだろうか。
ギードが俺の方へと近づいてくる。
手が。
俺に触れようとしたその時、ドアが勢いよく蹴破られた。
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