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第108話 継母冥利につきますな!
11ー8 救出
「アンリ!」
「ロゼス君?」
俺は、突然、現れたロゼス君に驚いて目を見開いた。
なぜ、ここにロゼス君が?
「誰だ?ここをどこだと思ている!」
ギードがロゼス君の前に立ち塞がるが、ロゼス君は、臆することはなかった。
「僕は、次期グレイスフィールド伯爵、ロゼス・マチュアル・グレイスフィールド、だ。僕の大切な人を返してもらおうか!」
「何を!」
ギードが拳を振り上げる。
「アンリは、誰にも渡さん!」
ギードがロゼス君に殴りかかる。
俺は、叫んでいた。
「ロゼス!」
だが、ギードの拳は、ロゼス君に届かない。
空中でギードの拳は止まっていた。
黒い靄のようなものがギードの腕に絡み付いて動きを止めている。
「な、なんだ?」
「悪あがきは、やめることだな」
ロゼス君の背後からリュートが現れる。
「お前の父であるロートルワーズ子爵は、騎士団の手で捕らえられた。重罪は、免れまい」
リュートを見てギードは、ちっと舌打ちする。
適わないと見てとったのか、ギードは、リュートたちに背を向けると俺に向かってきた。
手には隠し持っていたらしいナイフが光っている。
「私のものにならないなら、いっそ、お前を殺してやる!」
俺は。
自分を庇うように両手を前に出した。
次の瞬間。
ギードが悲鳴を上げる。
ギードが持っていたナイフが赤く炎をあげて燃え、どろどろに溶け落ちる。
手を炎に焼かれてギードが痛みにその場に倒れ込みのたうち回る。
「ぐぁっ!あぁっ!」
俺は、ほぁっと熱い吐息を漏らした。
なんだか。
体が熱い。
でも、これぐらいのことで?
最近は、少し、魔力耐性ができてきてたのに。
俺は、潤んだ眼差しでリュートを見上げた。
助けて欲しい。
熱い魔力を俺に注ぎ込んで。
でも。
リュートの隣に経っているロゼス君を見て俺は、視線をそらした。
もう、リュートに抱かれるわけにはいかない。
だって、リュートには、ロゼス君がいる。
俺は、発情に火照った体を両腕で抱き締めて堪えていた。
「アンリ?」
耳元でリュートの声がして俺は、顔を上げた。
リュートが俺の頬にそっと触れる。
「リュート……」
俺は、はっとロゼス君を見た。
ロゼス君は、リュートの背後から俺をぎらぎらと輝く瞳で見つめていた。
「アンリ、苦しいのか?」
ロゼス君も俺の方へと手を差し出してくるが、それをリュートが払い除ける。
「これは、私のもの、だ」
「くっ!」
ロゼス君が顔を歪める。
リュートは、俺に微笑みかけると俺を横抱きに抱き上げる。
「屋敷に帰るぞ、アンリ」
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