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第109話 継母冥利につきますな!

 11ー9 違うんですか?  リュートは、俺を抱いてロートルワーズ子爵の屋敷を出た。  屋敷の中は、騎士団に制圧されて父は、捕縛されて連行されるところだった。  「アンリ!」  父が俺の名を呼んだ。  「誤解を解いてくれ!私は、ただグレイスフィールド伯爵家からお前を救出しただけだ!」  「あなたが俺を助けようとしてくれたことなんて、今まで、一度だってなかった」  俺は。  自分の冷たい声を聞いて驚いていた。  俺の言葉をきいてロートルワーズ子爵の顔色が赤黒く変わる。  「この、恩知らずが!」  騎士団に引き立てられながらロートルワーズ子爵は、俺に向かってわめき続けた。  「血の繋がった兄を誘惑するような穢らわしい輩のくせに!」  俺は、耳をふさいで父の罵りに堪えていた。  リュートは、さっさとロートルワーズ子爵の屋敷を後にした。  屋敷の外に停められたラインズゲート侯爵家の馬車に乗り込むとリュートは、俺に優しく口づけした。  労るようなキスに俺は、思わず涙していた。  「泣くな、アンリ」  リュートは、俺を膝の上に抱いたままぎゅっと抱擁する。  俺は。  リュートの腕の中で嗚咽を漏らしていた。  ふと、視線に気づいて顔を上げる。  正面から俺とリュートを凝視しているロゼス君の視線とぶつかって俺は、たじろいだ。  まずい!  ロゼス君の目の前でリュートに抱かれてるなんて!  俺は、リュートから逃れようと踠いた。  リュートは、顔をしかめると俺の耳元で囁いた。  「私に逆らうとは。躾がまだ足りなかったか?アンリ」  その声に俺は、背中がぞくぞくして。  ぶるり、と身体を震わせる。  リュートは、にぃっと口角を上げる。  「躾直しが必要だな」  「ま、待って、くださ、リュート」  俺は、リュートのキスを頬に受けながらもなんとか抵抗しようとした。  「あなたは、ロゼスを愛しているのでしょう?」  「はぁ?」  リュートがぽかんとする。  ええっ?  俺は、ちらっとロゼス君の方をうかがう。  ロゼス君は、信じられないという表情で俺を見つめていた。  違うの?  リュートとロゼス君は、お互いを思いあっているんじゃないの?  「まったく!」  リュートが呆れたというように頭を振った。  「お前は、何もわかってないな、アンリ」  「ほんとに!」  ロゼス君が怒ったように俺を見ている。  俺は、意味がわからなくて。  きょときょととリュートとロゼス君を交互に見ていたら、リュートに顎を捕まれてキスをされる。  それは、深いキスで。  「ん、くっ……」  俺は、口の中に入ってくるリュートの舌を押し掛けそうとするが無駄だった。  俺は、ロゼス君の目の前で貪られていた。    

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