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第15話
結局、あのままカイルの部屋で、同居生活が続いている。想いを通わせたあとの甘い日々は、こっぱずかしくもあり、でもそれ以上に、幸せで仕方ない。
カイルは何かから全開放されたようで、二人きりになると、フルスイングの溺愛モードになる。
「やめろってば!」なんて最初は照れていたマイロも、最近はもう「あ、はいはい」とスルーする場面も出てきた。
けれど…ここにきて、また新しい悩みが出てきてしまった。
マイロにとって、誰かと恋人になるのはこれが初めてだった。好きになった人も、カイルが初めてだ。
「好き」って確認し合ったあと、どうしたらいいんだろう?
カイルはこれでもかというほど構ってくるし、どこまでも甘やかしてくる。けれど、自分は、いつも受け身だ。
好きな気持ちは、負けてないつもり。
いや、むしろカイルよりも強いんじゃないかと思ってるくらい。
なのに、うまく伝えられない。
恥ずかしくて、素直になれない。
何をしてあげていいかも、いまいちわからない。自分は何ができるんだろう。
そして最近では、スキンシップもだんだん増えてきた。求められるのが怖いわけじゃない。けれど、その先を思うと、どうしても足がすくむ。
だけど、ほんの少し「カイルに求められたい」と思っている自分がいる。
こんな時…チルならきっと、図書室の本を読み漁ってヒントを探すんだろうな。
……と、考えながら、図書室へ向かっていた。
図書室に顔を出すと、別の司書がいて、チルは今「乗馬の練習中」と教えてくれた。
そのまま馬小屋の方へと向かう。
馬小屋近くになると、風に乗って聞こえてきたのは、チルの笑い声と、モーリスの声だ。
「あははっ、ジルさん、速いってば! わああ〜っ!」
「チルや! 遊んでないで、ちゃんと調教するんじゃ!もう、戻ってこんかい!」
「はーい! ほらジルさん、モーリス様に怒られちゃうよ? 戻ろっか。明日も来るからね」
暴れ馬と呼ばれていたジルを、チルは見事に乗りこなしている。ジルも楽しそうで、まるで意思を持って遊んでいるみたいだった。
騎士たちがその様子を遠巻きに見守る中、チルがジルをなでながら笑っている。その笑顔を見ているだけで、不思議と心がほぐれていく。
と、チルがこちらに気づいて、ぱっと顔を上げた。相変わらず、花が咲いたような笑顔だ。
「マイロ! 来てたの?」
「本当にジルと仲良しだな〜って思って、見てた」
「ちょっと待ってて〜」と、ジルを馬小屋へ連れていく。
その隙に、モーリスがササッとマイロに近寄ってきて、囁いた。
「マイロ! すまんのう……!」
声は小さいが、妙に真剣なトーンだ。
「え? ど、どうしたんですか?」
「ジーク坊やにな、しっかり叱られたわい……。わしがカイルに見合いをすすめたこと、いらんことをしたって……。まさか、お前さんたちが……恋仲じゃとは知らなんだ。カイルにはちゃんと謝ったからな」
「えっ? ちょ、モーリス様……な、なに?」
「なにって、お前さんとカイルじゃよ? ふたり、よう惹かれ合っておるんじゃろ?ま、周りも、だいたい気づいとるわい」
「ちょ、ちょっと待って……! だれが!? 陛下? チル!? カイルが言ったの!?」
モーリスのあまりにナチュラルな暴露に、マイロは大混乱。
「ふむ? まあ、色々じゃ!祝福しておるからな! お前さんたち、お似合いじゃ。婚姻届、いつ出すんじゃ?」
「ななな、なんの話してんですかあああ!」
耳まで真っ赤にしたマイロの叫び声が、馬小屋に響いた。
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