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第20話

「おい、行くぞ」 「........はい?」 意味のわからないジャックの言葉に、首を傾げる。行くってどこに?てか、まず今俺課題してるんですけど? タイピングの手を止め、ジャックを見上げると何故か私服に身を包んでいる。 「行くって、どこに?」 「あ?サージの誕生日祝い」 「.....はい?」 聞いてないよ? ———————————————————— ラフな格好をして連れてこられたのは、この街ではちょっとお高めで売っているBAR。 いや、いやいやいやいやいや、ちょっとまて。 「お前、そこら辺のホームパーティと一緒って言ったよな?」 運転席で堂々と乗っているジャックに言うと、ジャックは意味がわからないと言う顔をする。 「貸切なんだから変わんねぇだろ」 「変わるわボケェ!」 どう見てもBARに入っている人は、軽い正装をしている。ラフな格好をしているのは、俺とジャックだけだ。 「別にいいだろ」 「日本人わ!こういったことに!こだわんの!」 「めんどくせぇな」 だいたい!お前は正装してなくてもその顔で十分だからいいんだよ!俺は正装しなかったらマジで高校生に見えんだよ!! クソ野郎!と心の中で思っていると、俺の座席の方の扉が開かれる。 あ?と思いながら開けた人物を見ると、そこにいたのは今日の主役だった。 「よく来たな」 いつものように無表情だが、微かに頬が上がっているので、祝われて嬉しいんだなと思いながらサージを見る。 「おう、お前も着いてたのか」 「ディ以外、来てない」 ジャックの言葉に返事をしたサージは、少し嬉しそうだった顔が一変し、少し寂しそうな顔をする。 「.....もしかして、俺達って、」 「「遅刻だな。」」 揃ったジャックとサージの声に、カッ!と目が見開いてジャックの頭を叩く。 「イッテェ!」 「普通!チームメンバーの!誕生日会に!遅れるやつがいるか!!!」 「いいぞ、もっと言え」 「あぁ!?しかもディ以外来てねぇだと!?てめぇらは少しはディを見習え!!てか、事前に俺に言え!そうすればジャックを引きずってでも時間通りに連れてくる!」 後半はサージに向けた言葉で、そう言うとサージはグッと親指を立てる。 「任せた」 俺もサージに指を立てて返事をして、車から降りる。ジャックをそれに続いて降りてくる。 「悪いなサージ。さっき聞いたから誕プレ買ってないんだ」 「構わない」 「いや、それは悪いからさ、なんか欲しいものあったら言ってくれ」 「.....なら、」 「ん?」 「来週の休日、練習を見に来てくれ」 サージのお願いの、え?となる。いや、それぐらいなら頼まれたら来るけど..... 「そんなんでいいのか?」 「あぁ」 ハッキリと頷くサージに、戸惑いながらもいいぞ、と言うと、サージがかすかに微笑む。サージの笑った姿が初めて、俺も嬉しくなって笑う。 「さっさと行くぞ」 トンっと強めに頭を押され、うおっと言いながら数歩先に進む。何故かジャックは機嫌がいいようで、なんだアイツ。と思いながら背中を見る。 「機嫌が、いい、な?」 「功祐が面倒見るって言ったからだろ?」 「.....え?」 サージが首を傾げてくる。ん?え?.....え? 「え、え?あ?お、お、お、お、お、おおおお俺、そ、そそそそそ、そんなこと言ってなくね!?」 嘘だろ!?と叫びながら言うと、サージが指を立てる。 「ほら、ジャックを引きずってでも時間通りに連れて来るって」 「え、いや、一緒に住んでるから、ってか、居候してるから」 「来年も居るってことだろ?」 サージの、訳わかんない。と言う顔に、おれの顔も訳分からんという顔をする。しかし、ジャックが盛大な勘違いをしていることは分かった。それはひじょーに理解した。故に、俺の行動は決まった。 「おい!ジャック!!!勘違いすんなよ!!」 ジャックは俺の話なんて聞かず、さっさと中に入っていく。 「ジャーーーーック!!!!」 「うっせぇ!」 「お、俺は家が直ったら直ぐに帰るかんな!」 「あ?んだよ照れんな。ずっといていいんだぜ」 ようやくジャックの長い足に追いついた俺は、横に並ぶとジャックに肩を組まれる。重いわ!!! 「嫌に決まってる!!」 「安心しろ。てめーぐらい養える」 「んな心配はしてねぇ!」 てか、なんでてめぇなんかに養われなきゃいけねぇんだよ。 「あ?時間通り起こすんだろ?俺を」 「・・・・・・〜〜〜ッッ!!!誰が!!自分で勝手に起きやがれ!!!」 腹に思いっきりエルボーを決めるが、ジャックの割れた腹筋は安安と俺のエルボーを受け止める。 「っ、地味に痛てぇ」 「うっせぇ!!クソ野郎!クソ短小!!男の敵!むしろ女の敵!!まず人類の敵!!てか、俺の敵がぁぁぁぁぁあー!!!!」 「ジャックは全ての敵だな」 しみじみと頷くサージは、ジャックに1発殴られている。俺はそんな2人を無視してさっさとBAR内に入っていく。 BARの中は既に人が集まり賑わっており、いつものように数段高い位置にソファが置いてある。そこにはディだけがおり、今夜は女の連れ込みはしてないようだ。 辺りを見渡し、またディを見ると、ディは俺に気づいて手を振ってくる。それに振り返しながらそっちに行くと、ディが腕を広げるので俺も腕を広げる。うん、無意識だ。 「なんで来ないんだよ〜。俺とサージがサージの誕生日間違ったかと疑ったじゃんか〜!」 ガバッ!と抱きつかれて、肩に顔を填めてディが言ってくる。いや、サージよ、自分の誕生日を間違うやつはそうそういないぞ。 「悪ぃ、このパーティ今日知った」 「あれ?俺言ってないっけ?」 「聞いてねぇ」 「えー!まじ?ごめんね?」 きゅるる〜んと効果音がつきそうな顔で謝ってくるので、ムカついて一発頭を殴る。 「痛い!」 「無性にムカつく」 殴られた所を撫でながらディが拗ねた顔をする。 「あ、ジャックにサージ」 「おい、ディ、ツラ貸せ」 「え?なんで?」 「自業自得だ」 「なんでぇぇぇぇぇえー!!!」 ズルズルと引きずられて行ったディを見送り、俺とサージは定位置に座る。 「心が狭いな」 「誰が?」 サージの言葉に首を傾げるが、サージはお前は知らない方が幸せだ。と言ってくる。 バスケ関連か、なんて勝手に決めてバーテンダーに甘いお酒を注文する。 入口付近が騒がしくなっているので、グレイ達が到着したんだようなと思いながらサージとグラスを掲げる。 「おめでとう」 「ありがとう」 カツンと鳴らすが、さすがに揃ってないので飲むことは無い。

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