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第7話 憧れの人 ※微
憧れの人がいた…
____梅田茶之介 視点
俺が中学生の頃、姉が3人組のアイドルにハマっていた。
姉の推しは柏茂知。
もちろん、俺は男性アイドルなんて興味がなかった。
ある日の土曜日。
「今日現場なんだ〜」とうきうきで支度をしていた姉が、携帯を見て「ええ!?」と悲痛な叫びを上げた。
「どうしたの?」と訊くと、「一緒に行く予定だった友達が来れなくなったみたい…、どうしよう…、チケットが勿体無い!」と泣きそうな顔で言う。
「大変だね」なんて言っていると
「そうだ、茶之介も行こうよ!」と
姉がとんでもない提案をしてきた。
行きたくなかったのに、「予定がないならきなさい」と姉に引きずられて、ライブ兼握手会に行くこととなった。
ライブはめっちゃ良かった。
人生で初めて見るアイドルのライブは、動画やサブスクで音楽を聴くのとは全然違って、とても高揚感があった。
演出もちゃんとしていたし。
問題は握手会だ。
俺はどこに並んだらいいんだ?
姉は当たり前に茂知のところに並ぶ。
が、その人の列はとんでもなく長くて、並ぶ気にならなかった。
麦って人のところも結構多いし、人気のグループなんだな、なんて感心していた。
が…、畠山実という何とも農家さんのような名前の彼の場所は、とても空いていた。
確かに茂知や麦に比べれば、華はないかもしれない。
俺から見たら全然アイドルとして輝いていると思ったけどな…
失礼ながら少しの同情から、俺は畠山の列に並ぶ…、というか並ぶまでもなく彼の前に立った。
「男の子のファン?嬉しい!!
君、僕のところに来てくれたの初めてだよね?
ライブ、楽しめたかな?」
と、眩しいくらいの笑顔で言われ、握った手をブンブン振られて、俺は若干面食らった。
女の子じゃなくても、こんなにファンサしてもらえるの?
「あ、えと、すごかったです。
畠山さんのソロの曲も良かったです」
と、俺がなんとかライブの感想を絞り出すと
「ほんと!?嬉しいなぁ〜。
お名前はなんて言うの?
あ、これ、ライン超えかな?」
と、畠山はさらに嬉しそう。
人が少ないゆえ、剥がしも来ない。
「えっと…、さ…、ちゃちゃまるです」
なんとなく、こういうのって本名は言わないのでは?と思い、自分と名前が似た、当時好きだったキャラクターの名前を言う。
SNSもこの名前でやってるし…
「ちゃちゃまるくんか!
また機会があったら遊びに来てね!」
と畠山は、俺の手をぎゅっと握り、離した。
それから、なんとなくそのアイドルが気になって、姉に「チケット取る時は俺の分も取って」とお願いした。
姉は「え、なに?茶之介も餅麦畑ハマった?」と嬉しそうに俺のチケットも取ってくれた。
それから、高校に入るまでは、ライブや握手会に行ったり、畠山のSNSをフォローしてたまにリプライを送ったりしていた。
彼は俺を認知してくれて、会えば名前を呼んでくれるし、リプも返してくれた。
よく考えたらまあまあ痛いファンなんだけど、中学生のしたことだから許して欲しい。
しかし、そんな推し活も長くは続かず…
高校生の時に俺はアイドルの育成学校に通うことになった。
畠山さんみたいなアイドルになりたい、その一心でレッスンに励み、オーディションを受けまくった。
親との約束で、高校は卒業することになっていたので、両立をするためには推し活を諦めるしかなかった。
とあるオーディションを受けた際、そのオーディション自体は落ちたけど、「餅麦畑っていうアイドルの新メンバーを探してて…、梅田くんどうかな?」という打診が来た。
そんなの、二つ返事でOKを出したい!
そう思ったが、ふと、畠山さんの立場だったら、以前のファンが新メンバーとして入るの、怖くないだろうか?と不安になって。
俺がアイドルを目指したのは、もちろん畠山さんの影響だけど、彼と繋がるためではない。
決してそんな下心はない。
でも、そう思われるなら断るべきか…、と葛藤した。
散々悩んだ挙句、今のオーディションに落ちまくっている俺がアイドルになるには、それが近道だと思い、受けることにした。
俺が"ちゃちゃまる"であることは隠し通さなければならない。
見た目も垢抜けて、背もだいぶ伸びたから気づかれないだろうと思っていた(大してお金も落とさない中学生のガキだったし忘れているだろうと)。
が、畠山さんは覚えていた。
「人違いだ」で押し切ったけど。
その時の悲しそうな畠山さんの顔に、少々心が痛んだ。
で、なんやかんやで…、その畠山さん、否、実さんが目の前で寝ている!!!
ちゃんと「寝ましたか?」って確認をとったから確実に寝ている!!
ただの憧れだと思っていたんだけど…、余裕で抱けるな…
っていうか、そもそも、この人が無自覚に人を煽っていると思う。
無害そうな笑顔で、すごく優しくて、距離感バグってるし。
麦さんは分からないけど、確実に茂知さんはこの人のことが好きだと思う。
俺は我慢できずにうっかり、実さんを抱きしめ、匂いを嗅いでしまった。
普通に勃起したけど、ファンとしてメンバーとして、一線を越えてはいけないと、実さんを撫でることで落ち着けようとした。
が、数分しか持たず、俺は陰茎を実さんの程よく鍛えられつつも柔らかさを保ったお尻に擦り付け…、無事に吐精した。
借りたパンツとズボンだから汚さぬように、出す時はちゃんとトイレに間に合わせた。
…、完全にやばい。
このままでは、実さんに近づくために餅麦畑に入った感じになってしまう!!!
この下心はちゃんと封印しなきゃ…
それにしても…、実さんが可愛いので、俺は再び彼のベッドに潜りこみ、しっかりと彼を抱きしめて眠った。
明日起きた時の言い訳を考えながら…
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