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第29話 夢か現か ※微
「え…?」
呆然としながら、目の前にいる茶之介くんを見る。
僕のソレは彼の手の中にあった。
茶之介くんは気まずそうに眼を逸らしながら
「最近、実さん、マッサージの後に立ってることがあって…、ついでに抜いてました!すみません!」
と頭を下げた。
なんだ…、そういうことだったのか…
もちろん、寝ている相手の性器に触るなんて犯罪なんだけれど、茶之介くんはきっと親切心から先輩の介助をしてくれたのだろう。
だとしたら大変申し訳ない。
「いや、むしろ僕のほうこそごめん。
茶之介くんは気を使って処理してくれてたんだもんね。
自分では、あまりそういう欲がない方だと思ってたんだけどなぁ…」
「い、いえ、気を使ったわけじゃ…」
「今後…、まあ、もうマッサージしてもらうことはないと思うけれど…
今後、僕がその…、た、立っちゃってるみたいなことがあっても、放置していいからね!」
僕はしどろもどろになりながら言った。
顔が熱くなっていくのが分かる。
だって10歳近く年下の男の後輩に「抜かなくていいよ」なんて言っているのが、恥ずかしくないわけがない。
微動だにせず、何も言わない茶之介くんに痺れを切らし、僕は彼の手をそこから外そうとした。
「もう大丈夫だから、汚いし、早く手を洗っておいで」
彼の手には、べったりと僕の精液が付着している。
恥ずかしいから、早く洗い流してもらいたい。
「汚くなんてないです」とぼそりと茶之介くんが言った。
「俺に触られるの、嫌でした?」
「え?ううん!全然!
でも、茶之介くんが嫌でしょ」
こんな年上の、しかも男の先輩のブツなんて触れたくないはずだ。
「俺も嫌じゃないですよ」
クチュっと音がして、性器に電気が走ったような快感が突き抜ける。
「あっ…」
僕は前かがみになって、僕自身をしごく手から逃れようとした。
が、圧倒的な体格差と力の差で逃れられない。
イッたばかりだからか、それとも他人の手だからか、自分では得られなかったような未知の快感に僕は悶える。
「やっ、ダメ!!触っちゃヤっ…、いぅっ…」
暫くして、僕はもう一度射精してしまった。
ドッと疲れて、僕は目の前の茶之介くんに凭れ掛かる。
何だ今の…
肩で息をしながら「なんで」と呟く。
自分でも驚くくらい掠れた、力ない声だった。
「すみません」と、茶之介くんが答えにならない謝罪をする。
謝るくらいなら、なんでこんなことを…?
ふと、茶之介くんのモノも立っていることに気付いた。
もしかして、茶之介くんは夜だからムラっと来てしまって、都合よく目の前にいた僕を使っただけなんじゃないかと思った。
それで僕は、「これ…」と言いながら、彼のモノに触れる。
「えっ!?」と大きな声を出しながら、体をびくつかせた。
「僕、手伝おうか?」
見上げると、彼は目を見張った後に「はい」と答えて、あろうことか僕の唇を奪った。
え!?キス!?なんで!!?
と混乱したものの、2度もイかされた僕の体は力が入らず、彼のされるがままに口内を蹂躙される。
アイドルになってから、性交はおろか、キスすらしていない。
実に6年以上ぶり。
しかも、その時だって相手は女性で、僕がリードする方だったから、こんな風にキスでかき回されたことがない。
散々めちゃくちゃにされて、そのままベッドに押し倒される。
茶之介くんは「可愛い」とか「実さん」とか囁きながら、僕の首筋や胸元に舌を這わせている。
くすぐったいけど、抵抗する元気もない。
そもそも、今の状況が夢か現かも分からない。
その間もぐちゅぐちゅという水音が聞こえるので、茶之介くんは自分のモノをしごいているのだろう。
「うっ」と茶之介くんが短く呻き、体を硬直させた。
僕の太ももあたりに生暖かい液体が零れる。
茶之介くんもどうやらイったらしい。
茶之介くんが、息を整えている。
少しして、ティッシュを取る音がして、太ももを拭かれた。
「すみません」
「うん?」
疲れ果てていた僕には、何の謝罪か分からなかった。
茶之介くんは、僕にズボンをはかせると手を洗うためか、部屋を出て行った。
彼が戻って来たかどうかを確認する前に、僕は限界が来て眠りに落ちてしまった。
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