29 / 59

第29話 夢か現か ※微

「え…?」 呆然としながら、目の前にいる茶之介くんを見る。 僕のソレは彼の手の中にあった。 茶之介くんは気まずそうに眼を逸らしながら 「最近、実さん、マッサージの後に立ってることがあって…、ついでに抜いてました!すみません!」 と頭を下げた。 なんだ…、そういうことだったのか… もちろん、寝ている相手の性器に触るなんて犯罪なんだけれど、茶之介くんはきっと親切心から先輩の介助をしてくれたのだろう。 だとしたら大変申し訳ない。 「いや、むしろ僕のほうこそごめん。 茶之介くんは気を使って処理してくれてたんだもんね。 自分では、あまりそういう欲がない方だと思ってたんだけどなぁ…」 「い、いえ、気を使ったわけじゃ…」 「今後…、まあ、もうマッサージしてもらうことはないと思うけれど… 今後、僕がその…、た、立っちゃってるみたいなことがあっても、放置していいからね!」 僕はしどろもどろになりながら言った。 顔が熱くなっていくのが分かる。 だって10歳近く年下の男の後輩に「抜かなくていいよ」なんて言っているのが、恥ずかしくないわけがない。 微動だにせず、何も言わない茶之介くんに痺れを切らし、僕は彼の手をそこから外そうとした。 「もう大丈夫だから、汚いし、早く手を洗っておいで」 彼の手には、べったりと僕の精液が付着している。 恥ずかしいから、早く洗い流してもらいたい。 「汚くなんてないです」とぼそりと茶之介くんが言った。 「俺に触られるの、嫌でした?」 「え?ううん!全然! でも、茶之介くんが嫌でしょ」 こんな年上の、しかも男の先輩のブツなんて触れたくないはずだ。 「俺も嫌じゃないですよ」 クチュっと音がして、性器に電気が走ったような快感が突き抜ける。 「あっ…」 僕は前かがみになって、僕自身をしごく手から逃れようとした。 が、圧倒的な体格差と力の差で逃れられない。 イッたばかりだからか、それとも他人の手だからか、自分では得られなかったような未知の快感に僕は悶える。 「やっ、ダメ!!触っちゃヤっ…、いぅっ…」 暫くして、僕はもう一度射精してしまった。 ドッと疲れて、僕は目の前の茶之介くんに凭れ掛かる。 何だ今の… 肩で息をしながら「なんで」と呟く。 自分でも驚くくらい掠れた、力ない声だった。 「すみません」と、茶之介くんが答えにならない謝罪をする。 謝るくらいなら、なんでこんなことを…? ふと、茶之介くんのモノも立っていることに気付いた。 もしかして、茶之介くんは夜だからムラっと来てしまって、都合よく目の前にいた僕を使っただけなんじゃないかと思った。 それで僕は、「これ…」と言いながら、彼のモノに触れる。 「えっ!?」と大きな声を出しながら、体をびくつかせた。 「僕、手伝おうか?」 見上げると、彼は目を見張った後に「はい」と答えて、あろうことか僕の唇を奪った。 え!?キス!?なんで!!? と混乱したものの、2度もイかされた僕の体は力が入らず、彼のされるがままに口内を蹂躙される。 アイドルになってから、性交はおろか、キスすらしていない。 実に6年以上ぶり。 しかも、その時だって相手は女性で、僕がリードする方だったから、こんな風にキスでかき回されたことがない。 散々めちゃくちゃにされて、そのままベッドに押し倒される。 茶之介くんは「可愛い」とか「実さん」とか囁きながら、僕の首筋や胸元に舌を這わせている。 くすぐったいけど、抵抗する元気もない。 そもそも、今の状況が夢か現かも分からない。 その間もぐちゅぐちゅという水音が聞こえるので、茶之介くんは自分のモノをしごいているのだろう。 「うっ」と茶之介くんが短く呻き、体を硬直させた。 僕の太ももあたりに生暖かい液体が零れる。 茶之介くんもどうやらイったらしい。 茶之介くんが、息を整えている。 少しして、ティッシュを取る音がして、太ももを拭かれた。 「すみません」 「うん?」 疲れ果てていた僕には、何の謝罪か分からなかった。 茶之介くんは、僕にズボンをはかせると手を洗うためか、部屋を出て行った。 彼が戻って来たかどうかを確認する前に、僕は限界が来て眠りに落ちてしまった。

ともだちにシェアしよう!