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第42話 手強い相手

ファンミから、さらに茶畑人気に火が付いたところで、今度は蜂谷さんとのラジオ出演だ。 人気のラジオのMCが楽しく場を盛り上げている。 声だけでこんなに楽しそうな雰囲気にできるってすごいな…、と感心するのも束の間、蜂谷さんからの猛アタックがすごい。 始まる前から「次、いつ家にくる?」とか「今日も可愛いね」とか、事あるごとに口説いて来る。 「仕事やりづらいんで控えてほしいんですけど」と伝えたが、「俺、自覚なかったんだけど、どうやらグイグイ系みたい」と笑顔で言われた。 友達だと思っているその場のスタッフさん達は「仲いいっすね~」と面白そうにしていた。 これがガチだとバレたら死ぬほど気まずい。 てか、噂になるだろう。 蜂谷さんとしても、自分の人気が左右されてしまうような立ち振る舞いは避けるべきじゃないのか…? 「お2人が出演されている”瑠璃茉莉が咲いた日”ですが、かなり人気のようですね」 とMCが僕たちに話題を振る。 映画は公開されて1週間でかなりの興行収入となっている。 原作人気は勿論、監督だって有名な人だし、蜂谷さんを始め沢山の実力俳優を起用している。 興収が高い分、かなりの予算もはたいている。 「おかげさまで。俺としてもかなり見応えのある作品になっていると思います」 と蜂谷さんが嬉しそうな声で言った。 「サブスクで、お家で、というのもリラックスできて良いと思いますけど、今回は綺麗な島国で撮影をしてきたので、ぜひ大画面で雰囲気を味わってほしいです」 と僕が言うと、MCが「確かに。ポスターの海も、とても綺麗ですもんね」と頷いた。 「はい。ぜひ、劇場へ足をお運びください。 それと…、俺がはたちゃんたちの”餅麦茶畑でつかまえて”に出るんですよ!」 と蜂谷さんが言う。 MCが「え!そうなんですか!?」と驚いている。 この件は、宣伝しても良いことにはなっていたけど、台本にはない。 しかも、はたちゃんって呼んでるし… 「ますます、はちはたから目が離せませんね~」とMCが笑みを含ませた声で悪戯っぽく言った。 はちはた、と言うのは今回の映画から、僕たちを知った子達が呼んでいるコンビ名的なものらしい。 SNSで流行っていたので、僕には”らしい”ということしか分からないけれど。 「そうなんですよ!俺たちから目を離さないでくださいね~」と、蜂谷さんはノリノリだ。 「本当に仲良しですね」と言ったMCに「俺、はたちゃんのこと大好きになっちゃったんで」と答える蜂谷さん。 そんな彼に目を剝いていると、MCが「素敵な友情に乾杯。それではここで1曲」と進行をした。 「OKです」というスタッフさんの声が聞こえて、僕は脱力した。 ここで映画の主題歌が流れ、僕たちは離席する。 その後は、ゲストなしでMCが1人で回す、といった内容だった。 茂知は自分のラジオ番組を持っているけれど、これは楽な仕事じゃないなと思った。 ゲストとして出た僕の苦労は、ほぼ蜂谷さんのせいだけど。 「蜂谷さん、台本に無いことしないでくださいよー!」 一仕事終えたぜって感じで満足顔をしている蜂谷さんを睨む。 「ふふ。それが生放送の醍醐味じゃん」 と余裕そうなのが先輩ながらムカつく。 「で、はたちゃん、この後の予定は?」 「さっきも言いましたけど、レッスンです」 「え~?マネに確認したけど、自主練なんでしょ?」 おい、他人のマネージャーに予定を訊くな。 てか、マネージャーも教えるな、と思いつつ 「アイドルなんて自主練自主練ですよ」 と僕は鞄を肩にかけ、帰る支度を整える。 「そういうストイックなところも好き」と、蜂谷さんは笑顔で手を振っている。 僕の恋愛対象が男性だったらコロッと落ちてしまいそうな顔をしていた。 全く…、自分の顔の良さを知り尽くしている人だ。 絆されないぞ、という強い意志を込めて彼を睨み、「お疲れ様です」とあいさつをして車に乗り込んだ。 僕が睨んでもニコニコしていてかなり手強い。 早く共演ラッシュが落ち着いて、蜂谷さんが僕の事を何とも思わなくなってくれればいいのに…

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