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第45話 誰のせいで牽制してると思ってんだ

----------  (柏茂知 視点) 目の前に置かれたフルーツパフェと説明している店員を交互に見ながら目を輝かせるはたを横目で見る。 良かったな、甘いの大好きだもんな。 説明を聞き終え、早速一番上のイチゴを食べて「うま~」と喜んでいる。 これが6歳上のリーダーだなんて信じられない。 そう思って苦笑していると、「ほら、茂知も」とフォークを差し出してきた。 乗っているのはシャインマスカット。 甘いのは得意ではないが、仕方なく口に入れる。 『うぇ、甘…』と心で思いつつも「うん、美味しい」と答えた。 「フルーツがどれもこれも新鮮で大きいですね」とはたが言うと、すかさず店員が説明をする。 その日の朝とれたものを仕入れているだとか、仕入先の近場の農園は店長が足を運んで吟味して契約をしたところだとか。 それにいちいちはたが驚いたり、感心したりしているので、俺も合わせて好意的な相槌を打つ。 麦ほど上手くはないが、数年前と比べてだいぶ上手くなったはずだ。 はたはそもそも、心からのリアクションをしているので演じなくていいのが少し羨ましい。 そして、次に俺の前にあるチョコレートケーキを試食する。 少しだけフォークで取って、口に運ぶ。 頷いてから「甘さ控えめで俺でも美味しく食べられる」と言いつつ、『全然甘くて無理』と反対の事を思う。 甘いものが苦手なのに、女性人気のグループのせいで甘い物ばかり紹介させられるのにはうんざりしている。 でも今回は、はたと2人だけなので幾分かマシだ。 「いいな~、僕にも!」とはたが言うので、大きめに切り取って差し出す。 はたは躊躇いなく口に入れると「美味しい!!」と破顔した。 その光景を見ていた番組のレギュラーであるタレントに「ほんまに仲良しやね」と言われた。 はたが「そうですか?」と首を傾げる。 「そらそうやろ! 俺、男と食べさせ合いっことかしたことないで」 と、驚いているタレントにはたが赤面した。 「す、すみません! うっかりいつもの感覚でやっちゃいました! カットしてください」 と訴えている。 いつもやってるのか、って墓穴を掘っている気がするけど… 「いや、無理無理。 食べた後にちゃんと食レポしてるからカットは無理やろ」 鋭いツッコミに「そんなぁ」と肩を落としている。 「ってか、いつもやってんの?」とタレントが言った。 あわあわしているはたを助けるべく、 「俺や麦が良く好き嫌いをするので、そういう時ははたに無理やり食べさせられてます」 と答えた。 「ええ!?ママやん。 俺にも食べさして、ママ」とタレントがふざけた。 「ええ!?今日だけですよ~」とはたがフォークを差し出そうとしたので、すかさず腕を掴んで俺が食べた。 『うぇ…、甘すぎだろ』とげんなりしながら、生クリームを纏ったバナナを咀嚼する。 そんな俺を、2人はポカンとした顔で見ていた。 「あ、すみません。このパフェめちゃくちゃ美味しかったので」 と苦し紛れの言い訳をすると 「茂知ったら…、わざわざ加賀さん(タレント)のを盗らなくていいじゃん。 言ってくれればあげるのに…」 とはたに睨まれる。 「お行儀悪いよ」と。 そんなはたとは打って変わって、タレントは「もちくん、嫉妬してるん~?」と冷やかしてきた。 鈍感すぎるはたには常々イラっとしているが、やたら勘が良いのも面倒だな。 俺はそのタレントに「さあ、どう思います?」と笑顔を向ける。 タレントは一瞬真顔になった後に、「なんや怪しいな~」とさらっと流して次のお店の話題に切り替えた。 流石、レギュラー番組を持っているだけある。 ちゃんとプロの対応をしたことに感心しつつ、はたに視線を移す。 「あまり変なこと言わないでよ」と、はたが俺を小突いた。 しかし、こうやって周りを牽制しなきゃいけないのは全部はたのせいなんだけどな… 納得いかない気持ちになりつつも、次は中華だったので気分がマシになった。 が、最後にゴマ団子と杏仁豆腐が出てきて、また気分は降下した。

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