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第49話 相手はどいつだ
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(柏 茂知 視点)
酒が入っていたのと、はたが色々とめんどくさかったのでうっかり朝まで一緒に寝てしまった。
確かめなくても分かる。
朝起ちしている…
そりゃ好きな奴と一晩一緒に寝て、反応しない奴なんかいないだろ。
俺は悪くない。
気付かれる前に離れようとして、しっかりと服の裾を掴んでいるはたの手を外そうとする。
が、「まだ寝る」と舌足らずな声で抗議された。
「はたは勝手に寝てればいいだろ。
トイレくらい行かせろ」
俺がそう言ってはたの手を掴むと、はたは「やだ」と言ってさらに俺にしがみ付いて来る。
多分、はたの膝が俺のソコに当たっている気がする。
はたは構わずに俺の首元に顔を擦りつける。
頬に当たる柔らかい髪に、首にかかる温かくて湿った吐息…、それが片思いの相手なら興奮しない奴はいないだろ。
「んぇ?…、もち、勃ってる?」
はたが言う。
気付いても言うなよ、と溜息を吐く。
「生理現象」
俺がそう言ったが、「ふーん?」とはたは納得していない様子で足を動かす。
「おい、やめろ」
「んふふっ、だってもちが勃ってるの初めてだもん」
こいつ…、寝ぼけてるのか?
なんでメンバーの前で勃たなきゃいけないんだよ、当たり前だろ。
そう心の中で悪態をつく。
「ガチガチ」
そう言ってツンツンする膝を止めない。
はたは普段、年長者としてリーダーとして、しっかりしているところしか見せない。
が、プライベートや酒を飲んだ時にガキっぽくなることがある。
そのギャップにまんまとやられた。
「お前さぁ…、こんなんじゃ手を出されても文句言えねぇぞ」
俺がそう言うと「もう出されたし」とはたがむっとして言った。
「は?」…え、もう手を出されたって言ったか?
でも、はたの手を出されたって…
「誰かに殴られたのか?」
殴るってことだったよな?
「まさか。性的な意味で、だよ」
と、はたはスンとして答えた。
いや…、いやいやいや。
何を言ってるんだこいつは!?
しばし、混乱して言葉を発せないでいると「痛かった」とはたが要らない感想を寄こした。
痛かった…?
痛かったって…、もう男とそういうことをしたってことか?
この『全く性とは無縁ですよ~』って顔をした男が!?
「相手は…?」
ショックのあまり、俺の声は震えていた。
「えっと…、それは言えない」
はたは相手をかばっている。
と言うことは、同じ業界の人間か…
「新人か?」
「ううん!そんなことするわけないじゃん!
茶之介くんは、まだ10代だよ!?」
この際、歳なんて関係ないという文句は飲み込んだ。
じゃあ、一体…
「まさか…、蜂谷か…?」
俺の言葉に、微かにはたの肩が動いた。
俺は確信する。
あいつか…
俺と麦が大事に守ってきたものがすべて横から掻っ攫われていく。
気持ちを伝えることも、家に泊まることも、さらには体を繋げることも…
全部、はたをグループを思って、思いとどまったことだったのに…
台無しだ。
だから、はたには俺たち以外との仕事をさせるなって言ったのに。
俺は苦しくなってきて、はたの顔を睨んだ。
俺の気持ちを知りもしないはたはポカンとした顔をしている。
「茂知…、今言ったことは誰にも言わないでね」
と、無神経すぎる一言を放つ。
俺はそれには答えず「はたも今日はオフだよな」と訊いた。
はたはさらにポカンとした後に「そうだけど」と答える。
「じゃあ、今日一日くらい足腰が立たなくてもセーフだな」
「…、え?」
そう答えたはたを俺は組み敷いた。
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