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楽しいデート 3
さほど歩いていないが宮子に足は痛くないか聞き、大丈夫だと返答を得る。
映画館はショッピングセンターの中の七階が受付となっており、八,九と映画館が入っている。時々来る裕司は勝手知ったる場所だが、宮子は来たことがないせいか受付の階に来てからというものキョロキョロと周りを見渡している。
今日見るアクション映画は前回作などがなく、宮子でも楽しめるだろうと選択したものだ。
たまにテレビで流れるCMで概要は知っていると話していて、尚且つ見てみたいと思っていたと宮子も言っている。エログロもない、事前調査もバッチリ。
多少ネタバレを喰らっているが今日は楽しく見ることができるだろう。
「ポップコーン食べる派ですか?」
「あ、私…えっと」
言い淀む様子にどうしたのだろうと待ってみれば、小声でチュロスとホットドッグ食べたいです、と返ってきた。宮子は女性にしては食べる方だ。それを彼女は恥ずかしいことだと思っているようで、普段は控えめに食べている。
でも今日は出先で、しかも魅力的な食べ物がたくさんだ。食べたくなってしまったのだろう。
それは、それはとても
「…可愛い」
「!!」
言った瞬間宮子が真っ赤になるのが見えた。そういういじらしいところが可愛いのだといますぐにでも熱弁したくなるが、ここは公共の場。我慢する他ない。
「買ってきますね、宮子さんはチケットを発券してくれますか?」
「あっ、は、はい」
これ以上ここにいると本当に口から色々と溢れてしまいそうだと思い、裕司は買い出しに行った。宮子も発券機の方に向かう。
今回映画のチケットを買ってくれたのは宮子だ。電子チケットが最近主流だがどうにも使い方がわからず、それならばと宮子がやりますと言ってくれたのだ。
宮子がチケットを買ってくれる代わりに、裕司は映画館でのドリンク代や夕食の材料費代を出すことになっている。裕司の方が出す分は多いが、それこそ男としてのプライドだった。
買っている途中で、ふと、宮子がチュロスを口に咥える瞬間を連想する。頬を綻ばせながら齧るその姿は非常に可愛いだろう。宮子は美味しそうに食べるから。
カウンターでポップコーンとドリンクのセット、チュロスとホットドッグを単品で1つずつ頼んだ。全てが乗った大きなトレーをもらい、発券機の近くにいる宮子の元に戻る。
「すみませんお待たせしました」
「あ、全然大丈夫ですよ」
「スクリーンは…三番ですね」
「あの、なにか持ちましょうか」
トレーの大きさを見かねてか、宮子が言ってくれる。こういう時、見栄を張るか素直に甘えるか迷う。少し考えて、時裕司は素直に甘えることにした。
「じゃあ、飲み物一つ持ってもらえますか」
「任せてください!」
そう言って宮子はトレーから一つ飲み物を取った。
それから二人でエスカレーターに乗って八階の三番スクリーンに行き、席に座った。
トレーを一旦裕司の膝の上に置き、各々食べるものを取る。裕司はポップコーンを、宮子はチュロスとホットドリンクを、そして飲み物。開場してからすぐに来たせいかまだ人はまばらで会話がしやすかったため二人は映画が始まるまで気楽に話していた。
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