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苦しい言い訳 2

 宮子さん、大丈夫ですか?と裕司ホットティーの入ったカップを差し出してくれる。 雅は人をダメにするらしいクッションに体と顔を埋めさせ、小さく頷いた。申し訳ないがティーカップはまだ受け取れない。  ホラー映画は散々だった。 家に着いた時に裕司が結構怖くてお気に入りだと話していた通り、内容はかなり怖かった。日本のホラーで、ある日から家になにかが取り憑き段々と住民もおかしくなっていくという、人怖でもあり心霊ホラーでもあるものだった。  特に首を吊った母親の下からのアングルが怖い。血走った目、涎の垂れた口、ボサボサの髪の毛…。思い出すだけで鳥肌が立つ。  特に雅はジャンプスケア系のホラーが苦手なのだが、今回見たホラー映画はまさしくそういうタイプで、バン!ドン!と幽霊が出るたびなにかにつけて大きな音が鳴るのだ。 そしてその度に隣にいる裕司の腕を掴んでしまった。 「ホラー映画、苦手だったんですね…すみません配慮が足りなくて」 「いえ…私が見栄張ったのが悪いんで気にしないでください」  どうにか涙は堪えた。化粧が剥がれ男だとバレる方が雅にとっては恐怖だからだ。  ゆっくり起き上がって裕司からティーカップを受け取る。暖かいそれのおかげで少しだけ心が和らぐ。一口口に含むと、ふんわりと蜂蜜の甘い味がする。 雅が蜂蜜好きなのを知って彼が蜂蜜紅茶を定期的に家に置いてくれているのを雅は知っていた。 「美味しいです。ありがとうございます」 「よかった。でも本当に無理させてしまってすみませんでした」 「とんでもないです!最初にホラー映画は見れないって言っておくべきでした」  正座をしてぺこりと頭を下げると、裕司も座って同じように頭を下げてきた。 ちょっとの間そうしてお互いに謝りあって頭を下げていたが、その行動が途中から面白く感じてしまいふふ、と雅が笑うと裕司も笑ってくれる。 「もう一本はほのぼのしたものにしましょうか」 「そうですね、お願いします」  今日は裕司はよく喋ってくれる。普段はもう少し無口なのだが、映画のことになると饒舌になるらしい。  これはいいことを知ったなとポケットから出した携帯のメモアプリを開き、“相良 裕司“と書かれたフォルダに裕司さんは映画が好き、とメモる。こうして好きな人の趣味嗜好をメモに綴るのが雅の趣味でもあった。  すると裕司がどうかしましたか?と雅の顔を覗き込んできた。瞬間、どきっとする。裕司は気づいていないらしいが、裕司はイケメンの部類だ。  そんな彼に近づかれたとなるとどうしても胸が高鳴ってしまう。そして同時に自分が男であることを思い出し化粧が剥がれて男に見えているんじゃないかと考え心がヒヤリと冷たくなる。 「あ、えっと、会社から連絡来てないか見てました」 「もしかして今日忙しかったですか?」 「いえ、大丈夫ですよ」  適当に言い訳してにこりと微笑めば安心したかのように裕司が隣に戻る。

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