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非の打ち所がないあなた 1

「最近相良さんとはどうなの?」  そう紗枝に聞かれ、思わず雅はスープを吹き出しかけた。  今は昼時。  普段はお弁当だが昨日作ったレバニラが思ったより美味しくて夜に食べすぎてしまい、お弁当分がなくなってしまったため今日は食堂でスープカレーを食べていた。  そんな折、仕事がひと段落着いたのか紗枝が隣いい?と話しかけてきたのだ。雅はもちろんいいよと言って紗枝のために椅子を引いた。  そして先ほどの一言。紗枝は雅と裕司が付き合っていることを知っている数少ない友達だった。  雅が男なことも知っている一方、雅が女性として生きたいと思っていると勘違いしている節もある。雅が特にその辺りは詳しく話さないし話したくないと思っているせいもあるが。 「ど、どうって…」 「ほら、最近聞いてないなーって思って。仲良いの?」 「仲は…多分、いいと思うよ。先週はアクション映画見に映画館行った」  なにそれサイコー、と紗枝は自前の弁当の卵焼きをつっつきながら言った。  この間の映画館デートは本当に楽しかった。雅がチュロスとホットドッグを食べたいとおねだりしたことも、それについて特になにも言われなかったことが嬉しかった。  女性にしては食べる方なんですね、なんて言われた際には雅はその日一日なにも食べないで過ごすだろう。でも裕司は優しい。きっと雅がたくさん食べてごめんなさいなどと言ってもたくさん食べるのはいいことですからと笑顔で返事してくれるだろうことは予想がつく。 「ゆ、裕司が、私がたくさん食べてもなにも言ってこないのが嬉しい」  相良さんって優しそうだもんね〜なんて紗枝が言って。瞬間、紗枝がぐるんと勢いよく雅の方を向いた。 「待って。裕司?やだー!とうとうさん付けやめたんだ!え、付き合って二年だよね?ようやくじゃん!」 「ちょ、紗枝ちゃん、声大きい!」  何人かの社員が雅と紗枝を見やる。紗枝は興奮すると声が大きくなってしまうのが玉に瑕だ。ついでに小声で敬語も取れたの、と報告すると今度は紗枝も小声でキャー!と叫んだ。  確かに、付き合って二年も経つのにさん付けで敬語なんておかしかったかもしれない。でも裕司も雅も特に気にすることなく過ごしていた。先週はどうしてか裕司は敬語もさん付けも取ろうと提案してきたが、なにか心境の変化があったのかもしれない。  しかし呼ばれたのは宮子という好きで呼ばれているわけではない名前、雅はあまり嬉しくはなかった。 「だんだんと本当のカップルになってきてるじゃーん!よかったね!」 「うん、嬉しい」  カップルとして成長できるのはなんだかんだ嬉しい。

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