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旅行と性嗜好 3

   食事をし、時々休憩でサービスエリアに寄りつつ、ようやく三重県の伊勢神宮に着いた。車から各々降りると、同時に伸びをする。ここまで約5時間。やっとである。 「運転お疲れ様!ほんとにありがとうね」  宮子は裕司の方に来ると肩をぽんぽこと叩いた。そうやって労ってくれるだけでも有難く、ありがとうと裕司は宮子の頭を撫でた。 「え、ぁ…」 「あ…」  その行動に宮子が顔を赤くする。裕司も、手をそっと退けた。そういえばあまり宮子を撫でたことがない。 「は、早く行こ! 」  そう言って宮子が裕司の手を取る。こうして考えると宮子は結構恥ずかしがり屋なのかもしれないなと思った。  伊勢神宮は話に聞いていた通り本当に広く、かなりの人がいた。周り方も独特で、境内にあった地図を二人で確認しながら進んだ。曰く回りきれない人は一泊二日の期間を取って回るらしい。  秋の涼しい気候であったため気分よく回れたが、もしこれが夏だったら軽く熱中症になるとこだった、と宮子と―笑いごとではないが―笑いながら話す。  それから帰りの道にあった授与所で二人でおみくじを引いた。  裕司はなんと大吉が出て「相談事:うまくいく」と書かれており正直ほっとしたが、一方で宮子は大凶と出てしまい沈んだ顔をしている。 「あ、あー…」 「私、ちゃんと神様にお参りしたのに…」  しょぼん、とする宮子。その姿すら可愛く、大凶って出ることが珍しいからいいことあるかしれない、と励ました。  しかし内容は散々で、「相談事:うまくいかない」「旅行:失敗する」「恋愛:今すぐやめるべし」とまで書かれている。宮子は小声で、そこまで言わなくてもいいじゃん、と不平を述べていた。  特に「恋愛:今すぐやめるべし」が効いたようで、おみくじ括ってくる…と悲しげな声で大量におみくじの巻かれた紐の方へ歩いて行ってしまった。    大凶は持って帰らず置いて帰るべきだというのを信じているらしい。裕司はそっと財布の中におみくじを忍ばせた。  そのあとはお守りを見た。宮子はさっきのおみくじをまだ気にしているのか開運鈴守と交通安全のお守りを一つずつ買って、交通安全の方を裕司にくれた。『帰りもちゃんとサポートします!』と拳を挙げてくれた宮子は頼もしい。  裕司も宮子になにか渡そうと思いお守りを見ていると、安産守りがあった。  少しふざけて、いる?と聞くと、宮子は頬を赤らめてそれはちょっと…と言う。  なんだか申し訳なくなり裕司はすぐにその守りを元の位置に戻すと、普通のお守りを宮子に買って渡した。

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