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性別と蟠り 1

 宮子、これ美味しいよと裕司が手前から取った器を持って雅に教えてくれる。宮子は嬉々として自分のところに置いてある器を取った。  今日は本当に最高の一日だった。紗枝に選んでもらった服は綺麗だと言ってもらえたし、道中の会話は非常に楽しかった。途中途中のサービスエリアは申し訳ないが逐一車椅子用のトイレを探して使わせてもらった。  伊藤が考えてくれた「荷物が多いから車椅子用のトイレの方が使いやすい」という言い訳に特に裕司がなにか言ってくることもなく、安心して行くことができた。  伊勢神宮は広くて周りきれなかったもののいろんな神様に会うというのはなかなかできない貴重な体験だった。 …その後のおみくじは散々だったが。  「相談事:うまくいかない」「旅行:失敗する」「恋愛:今すぐやめるべし」まるで今日一日のこと全てを否定するかのような内容に、今でも悲しくなる。ちゃんとお参りはしたはずだが、なにか神様の気に触ることでもしただろうか。  でも実際その通りだった。  雅は今日全てを話すために来た。男であること、今まで騙してしまったこと。いつ言おう、いつ言おう、そう悩んでいるうちに結局旅館までついてしまった。  話すのは夜になるかもしれない。裕司に拒絶された時は大人しく帰ろう、と考えている。その時相談事はきっと泣いてしまって“うまくいかない“し、旅行に来たのは“失敗“だし、恋愛は“今すぐやめなきゃいけない“というふうになるだろう。  正直、楽しい反面今日は憂鬱だった。    しかし旅館についてからはいい年してしゃいでしまって、裕司に生やさしい笑みを向けられてしまった。  そして食事の時間。宮子が女将さんに話した時間の通りに伊勢で有名な食事がたくさん運ばれてきた。  例えば伊勢海老のお刺身、松坂牛のミニステーキ、牡蠣など。特に松坂牛は美味しく、帰りに時間があったら松坂牛の店に寄ろうと話したほどだった。肉が好きだと前に話したのを裕司は覚えていてくれたのかもしれない、と雅は嬉しくなる。  フルコースを堪能した後のデザートはみかんのシャーベットだった。甘く、また少し酸味のあるそれを二人で堪能し、食事は終わった。  それなりに食べる雅も流石にお腹がいっぱいになってしまって、木製の座椅子にもたれかかって腹を押さえている。  裕司はお腹が空いていた分ちょうどよかったのか今は隣の部屋で荷物整理をしていた。  何してるんだろうなーと頭をのけぞらせて見ていると、裕司がそれに気づいて振り返った。目が合う。 「どうかした?」 「ん、何してるんだろうなーって」 「明日の用意してる。僕は寝る前に明日の服を枕元に置く習慣があるから」 「えらい…私そういう習慣ないや」  体を起こして裕司の隣に行きじゃあ私も用意しよーっと、と荷物を漁る。その様子を裕司がじっと見ていた。

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