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自分の気持ち 2

 先に風呂からあがると寝室側に布団が敷かれていた。食事の時に来た女将に布団を敷くかと聞かれてお願いしたことを思い出す。布団は間なくぴったりとくっつけて敷かれていた。  男女一緒だったのだ、カップルに見えたのだろう。実際には“宮子“は男だったわけだが。  さて、どうするか。  さっさと離してしまえばいいものを、さっきから雅の反応が楽しくてついつい意地悪をしてしまう。  きっと風呂から上がってこれを見た雅は顔を赤くするだろう。彼は今日何回顔を赤くするのだろう、面白い。 「すみません、上がりまし、」  あがってきた彼を見ようと振り返る。そこにいたのは旅館の浴衣を着て片手でタオルで髪を拭いている雅だった。  その姿を見た瞬間、どきと心臓が脈打つをの感じた。もしそれが“宮子“だったならすぐこの場で押し倒していただろう。  でも彼は“雅“だ。なにをどうするというのだろう。 「なにこれっ」  早速布団を見てしまった雅はそそくさと布団を引き剥がしに行った。その顔はすでに赤い。 「なんで離すの?」  つい意地悪でそんなことを聞けば、じろりと睨まれてしまった。流石にいじめすぎたようだ。  雅はなにも答えないまま洗面台の方に行く。数秒後、ブォーという音がしたためドライヤーをかけていることがわかった。  風呂に入っている時はメガネを外していたためよく見えなかったが、メイクを落とした彼はちゃんと男性寄りの顔をしていた。  そういえば“宮子“は必ずメイクポーチを持ち歩いて、トイレに行くときは綺麗にメイク直ししていたことを思い出す。メイクで人が変わるとは本当にその通りだなと思った。  雅はほどほどに髪が長いし時間もかかることだろう。布団で少し休んでいよう、と寝転ぶ。すると今日一日運転していて疲れていたのか、裕司はすぐに眠りについてしまった。

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