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可愛い彼 4
「雅?」
「あ、相良さん。どうしたんですか?今日ってお友達と飲むって言ってませんでしたっけ」
「今飲んでる」
「そうなん、ですか…?なにか用事です?」
「用事というかなんというか」
ちらりと周りを見れば関田は腕を振り上げやれ!と鼓舞激励してるし、石塚はニヤニヤ笑っている。そうして裕司はその期待に応えるべく雅に聞いた。
「雅は性欲とかあるのか」
「へっ、せい、せっ…な、なんの話して」
「どうなんだ」
「どう、性欲…」
「雅?」
「相良さんの変態!!馬鹿!!」
ぷつっと電話が切れる。そこで裕司は自分がやってしまったことを理解した。隣で二人が大爆笑してる中、立ち上がって一度部屋を出るとすぐさま電話をかけ直す。今度は長いコールで、ようやく雅が出てくれた。
「はい」
ぐす、と涙ぐむ声が聞こえたのは気のせいじゃないだろう。
「ごめん雅、ほんとごめん。酔ってて変なこと言った」
「相良さんの変態…馬鹿…変態…」
ボソボソと裕司を罵る声が聞こえる。もうなんと言ってもらってもいい、やらかしたのは自分だ。
「えっとだな、本当にごめ―」
「私にだって性欲はあるもん!バーカ!」
またぷつり、と電話が切られる。今、なんと。もう一度電話をかけようとして、メッセージが来ていることに気づく。
『次電話してきたら二度と自撮り送ってあげない』
それは困る。この間送ってくれた自撮りは携帯の壁紙にするほど気に入っているのだ。また送って欲しいのにそんなことを言われたら困る。
『わかった。でも本当に変なこと言ってごめん。今度埋め合わせするからまたデートしよう』
そう送ったものの既読になったまま返事は来なかった。
かんっぜんにやらかした。裕司は壁に背を預けるとそのままずるずると座り込んだ。いくら酔っていたからと言ってもやって良いことと悪いことがある。酒の力とは恐ろしいものだ。
帰ってこない裕司を心配してかリビングのドアから関田と石塚が覗いていることに気づく。
「どう、だった…?」
「超謝った」
「俺らも悪ノリが過ぎた…悪かったな」
「ごめん」
二人の謝罪を受け入れる意味で頷く。でも報酬もあった。二人に言うとまたノリが良くなってしまうため言わないことに決めたが、雅にも性欲があると言うことだ。これを聞けただけでも電話した甲斐があったと言うものだ。
裕司は立ち上がるとそろそろお開きにしよう、と二人に告げて片付けのためにリビングに戻った。
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